しのぶさんのネイチャー・レポート


アマツバメを天に返した話2005.4.25

  • 4月21日から4日間を立山・室堂平の雷鳥荘をベースにして雪の春山を楽しんでまいりました。と言っても、最初の2日間は猛吹雪で文字どおり缶詰、3日目は立山頂上直下の一ノ越からクロヨンダム湖まで滑りました。

  • 21日と22日は富山県地方は春の嵐で大荒れに荒れ、山岳地帯は猛吹雪となって4月17日に開通したばかりの高原バス道路(美女平→室堂)にも多いところでは3mもの積雪があって道路閉鎖になってしまいました。富山湾沖に停滞した小さな低気圧が原因で、海上強風警報が出され、テレビの天気図では富山県だけが傘マークという局地的な異常気象だったようです。

  •   さて、渡り鳥たちにとってこういう気象が一番危ないと聞いておりましたが、猛吹雪の中でアマツバメを拾いました。そのアマツバメは翼を十字形に開いたまま凍りついてしまったかのように、雷鳥平の凍った雪面をハラリ、ハラリとひっくり返されながら強風に流されて手元までやってきました。羽には氷も付着しておりましたが、まだ生きているようなので取りあえずリックの中に回収し、宿の雷鳥荘に連れて帰りました。

  •  主人の志鷹さんに応援を求めると、早速自然保護センターへ電話してくれましたが電話は出ません。志鷹さんは「雪面にたくさん鳥が落ちているのを何回も見たことがある」と話しておられましたが、こういう局地的な春の嵐には多くの鳥が命を落としているのかも知れません。専門家のアドバイスが得られないことが判ったので、三宅先生から教えていただいた救命法を思い出しながら、あれこれやってみることにしました。

  •  まず、凍死寸前の状態と思われたので、急激に温めるのは良くないと思い、木綿の小物袋に入れて、自分のセーターに包んで12℃前後の室内に放置することから始めました。

  • 1時間ほどして取り出してみると、手のひらに体温を感じ、眼も開いてくれました。これまで体験してきたどの野鳥とも違い、手のひらの中でさも心地よさそうにじっとして、あたりを眺め回しておりました。その様子には人間に対する恐れとか不信は全く感じられなくて、手のひらを開いても飛び立つ気配はありません。手のひらの中で小さく震えており、人間で云うと「低体温症」状態で「ブルガタ症候群」と呼ばれる「震えることにより体温をあげる生理現象」だったようです。間もなく3回脱糞しましたが、ほとんど透明な液体で空腹状態であることが想像できました。餌が必要なのです。

    [Image]

  • 再び主人の志鷹さんに「どこかに虫がいないだろうか・・・」と相談したところ、従業員全員に指示して探してくれましたが、一匹の虫さえ見つかりませんでした。地獄谷がすぐ近くで、しょっちゅう硫黄の匂いが流れてくるこの宿は、虫たちにとっては棲みにくい建物だったのかも知れません。生きた虫は手に入りそうには無いのでタマゴを茹でてもらい、コーヒー用の生クリームで溶いて割り箸の片面につけて食わせてみました。嫌がってなかなかくちばしを開いてくれませんが、アマツバメは目の後まで裂けた大きな口なので、成功すると簡単に大量に口中に給餌できました。飲み込んだのを確認したら再び小物袋に入ってもらってセーターの布団でお休みです。これを2時間おきに繰り返しましたが夕方になっても飛べそうなほどには元気さが見られませんでした。

    [Image]

  • 面白いことに袋の中では糞をしないで、手のひらに止まらせている間に2〜3回脱糞するので、健康状態がなんとなく分かるように思えました。水は飲ませていないのに相変わらず糞は液状でしたが、徐々に白くなり、間もなく黄色味さえ帯びてきました。卵黄の給餌は成功だったようです。指に止まらせたまま腕を上下すると、アマツバメはようやく羽を広げるようになりましたが、やはり飛びません。空中に放り上げると羽ばたきはするのですが、すぐに畳の上に着陸です。これで第一日目は終わりました。

    [Image]

  • 2日目の朝は猛吹雪で明けました。玄関の扉は1mも雪で埋まっております。外に出るのは諦めてアマツバメの看病とリハビリに専念することにしました。しかし、取り出すまではアマツバメがまだ生きているのかとても心配でした。 そおっとセーターの中に手を差し入れると、生き物の温かみが感じられました。取り出してみると震えは止まっており、生気が戻っているようでした。糞は緑色となり、少し飛べるようになりましたが、ガラス窓や壁や襖に当たるのが精一杯で、時速240kmで大空を駆けるアマツバメの飛びようではありません。同じ餌ばかり連続して与えると病気になって死ぬことがあるという三宅先生の話を思い出しましたが、他に食わせるものが無いので卵黄を与え続けました。一度だけ自分から餌をつついて食べたことがありましたが、相変わらず割り箸での給餌です。

  • 喫茶室では従業員の皆さんに可愛がってもらいました。まるで手乗りのインコのように衣服を這い上がり、肩まで来るとおとなしくして辺りを見まわしているのです。「どうして・・・」、「どうして・・・」と質問攻めに合いましたが、私としても始めての経験なので答えようがありません。但し、この時ほど自分が京都野鳥の会の会員であることが誇りに思えた事はありませんでした。喫茶室が広いので飛ばしてみましたが、すぐに下降線を描いて窓ガラスに当たって落ちました。怪我をさせてはいけないので飛行訓練は中止しました。後になって気がついたのですが、アマツバメには逃げようという気はなかったようで、広い空のもとでしか飛びたいという気力は起こらなかったのかも知れません。

  • 3日目の朝がやってきました。天気予報よりも早く回復したらしく、快晴で強い風が吹いておりました。周囲の雪山は朝日に染まってピンク色に輝き始めました。早朝5時過ぎです。宿の主人が「まだ来ていません」と言っていたイワツバメが3羽、強風の中を舞っています。8時ごろ放鳥したいとお知らせしたら、喫茶室を預かる中川さんが立ち会って下さることになりました。怪我をしたムササビを助けて山に返したことがあるという動物好きなご婦人です。

    [Image]

  • いよいよ時間です。カメラとビデオを構えた上でアマツバメを中川さんに渡しました。するとどうでしょう、「飛べるかな」と心配していたのに、飛び立つ前から昨日までの無気力なおとなしいアマツバメとは違っていました。飛ぶ気が満ち溢れているのです。写真で見ると翼角が尖って見えました。目が輝いておりました。衣服を肩まで登る勢いが違いました。ガスが流れる青空を見、マイナス何度かの冷たい風を感じた途端に野生と元気を取り戻したようです。

  • ビデオカメラを構える弟に「飛ぶゾッ」と叫んだのですが、間に合いませんでした。弧を描いて上昇を続け、5秒後には遥か高空のガスの彼方に見えなくなりました。なんという力強さでしょう。なんというスピードでしょう。これが私の心に棲み続けていたアマツバメの姿でした。野生の強さと美しさでした。思わず「一度ぐらい戻って来い・・・」と空に向かって怒鳴ってしまいましたが、聞こえたでしょうか。

    [Image]


ナラ枯れ病と芦生の森2004.9.22

  • ナラ枯れ病と笹枯れにより、芦生の森の姿が変わってしまいました。これからも、急速に森が姿を変えてゆくものと思われますのでご注目ください。

  • この秋、何度か芦生の森を歩きました。枕谷、野田畑谷、上谷、岩谷までの本流沿い、そして一昨日は三国岳から天狗にかけての 尾根の巨木の森を歩いて見ました。ナラ枯れとササ枯れが気になっているのです。

  • その全域でナラ枯れと笹枯れは進行しておりました。一年一年急速に姿を変えてゆく森の姿に驚いております。芦生の森でナラ枯れが見られるようになってから、5年目になります。2000年に芦生の入り口に侵入したときには、500mまでの低山域が被害を受けておりましたが、この夏は900mを越える三国岳の周辺でも数本やられておりました。いまや、芦生全域が対象山域となりました。カシノナガキクイムシの高度順応によるものなのか、地球温暖化による生息域拡大なのかは よくわかりません。

  • 京都大学芦生研究林では、その生態や防除法の研究が進められている様ですが、ミズナラが全滅するのではないかという危惧さえ抱いております。

  • まず、笹枯れですが、鹿の被食によるものと、京都北山から北に広がっている笹の一斉開花があるようです。

  • そしてミズナラの「ナラ枯れ病」です。数年前までは直径1mを越えるようなミズナラの巨木が、虫に食われて枯れるなど思っても見ませんでした。それが、私がこの秋歩いた芦生の全域で枯れたミズナラの巨木が目立つようになったのです。

  • 場所によっては5割を越える枯死率で、原生林、極相林といわれた芦生の森が、目の前で姿を変えようとしているのです。

  • 京都大学フィールド科学研究センターは、昨年9月に「芦生の森と"ナラ枯れ"」のシンポジウムを開きました。その資料が手元にあります。

  • 京都大学もようやく"ナラ枯れ"の研究に着手したようです。私は、安定した林相と考えられている原生林、極相林が僅か数年の間に姿を変えようとしているのだと受け止めて、専門家や学者の手で学術的な記録をきちんと残すべきだと考えておりました。

  • さて、芦生研究林(演習林)入り口の美山町にナラ枯れ病が侵入したのは、前記資料によると2000年とあります。その頃、害虫のカシノナガキクイムシが生息できるのは500mまでの低山域であると聞いておりました。その翌年には由良川源流域の京大研究林にも侵入し、私が観察した例では、三国峠(700m)でもナラ枯れが観察されました。

  • この秋には三国岳(959m)の周辺でも数本のナラ枯れを発見しました。カシノナガキクイムシが高所に順応したのか、夏の気温上昇により生息域を広げたのか良くわかりませんが、芦生全域に被害地域が広がっているものと思われます。

  • ミズナラと笹が消えてしまった芦生の森に、棲めなくなる生き物が沢山いるに違いありません。大型動物から昆虫にいたるまで、その姿が目に浮かびます。


天然記念物 比叡山鳥類蕃殖地2003.7.10

  • 「柴草山だった比叡山」という新聞記事(京都6/26 14版)が出て、メーリングリストでも話題になり、関心をもたれた方が多いと思います。私も入会以来二十数年間「本当にそんなに沢山鳥がいたのだろうか・・・・」という疑問が頭を離れませんでした。

  • 寄稿された小椋純一氏は京都精華大学教授で植生景観史を専門としておられ、当時の地形図や絵図、文献などを元に解析して、京都から見た比叡山の姿は柴草山だったと結論づけておられるのです。

  • 私は森や山にはより深い関心があり、その生態系の一部としての野鳥を知りたくて京都野鳥の会に入会した経緯もありますので、小椋先生の話もこれまでに二度ほど聴いたことがあります。社寺林や官林など伐採を制限されていた山林を除いて、特に都市に近い雑木山は燃料用の薪や柴として頻繁に切られ、落ち葉までかかれて疲弊し尽くして、部分的には雑草地であったという彼の解析は正しいと思います。

  • 改めて地図を手元に比叡山を眺めてみると、比叡山鳥類蕃殖地は京都からはほとんど見えないことに気がつきました。比叡山鳥類蕃殖地は延暦寺の霊域と重なり、地図で見ると大方は滋賀県側で尾根の陰に隠れて見えません。面積でいうと830万平米のうち160万平米が京都側で、その部分は黒谷・青龍寺のあたりですが、蛇ケ池から北に伸びる尾根に隠れてほとんど見えないのです。漱石の『虞美人草』に書かれているとおり、京都から登る比叡山は「萱ばかりなる山」だったのです。

  • さて、私の関心事は、天然記念物に指定された頃は何故沢山の鳥が棲み、繁殖していたのだろうか。鳥が沢山棲んでいた比叡山に、今は何故鳥がいないのだろうか。天然記念物指定には、川村多實二先生はどのようにかかわっておられたのだろうか、の3点です。

  • この疑問は、先日京都府と滋賀県の文化財保護課を訪ねて資料を入手し、すべてに納得がいきました。やはり川村多實二先生が直々に奔走されて天然記念物指定が実現したのです。滋賀県の文化財保護課には、川村先生直筆の「理由書」が遺されておりました。天然記念物指定の必要性と緊急性が簡略に書かれております。京都府では、昭和八年に編纂された「京都府史蹟名勝・天然記念物調査報告書・第十四冊」のコピーをいただきました。

  • 「比叡山鳥類蕃殖地」という表題で、地図等の図版5枚がついており、
      1.比叡山鳥界の特色
      2.天然記念物指定に到るまでの経過
      3.比叡山に多き鳥の種類
      4.叡山鳥類保護に関する注意
    の4項目、16ページにわたる長文の解説がなされておりました。

  •  「比叡山鳥界の特色」の中で、比叡山は標高500mぐらいを境にして温帯林と暖帯林の植生の特徴が見られ、より高地性の野鳥が棲息しているとし、植生ならびに棲息する野鳥の種類が多い理由を詳しくのべておられます。また、棲息する野鳥の密度が著しく高いことについては、原文をそのまま収録します。

    『往昔延暦寺寺域広大にして現在面積に数倍し、北方横川は勿論、東西南の三方にも鬱蒼たる森林遠く打ち続きし頃、或いは山の尾根或いは渓の岩陰に、思い思いに巣を構えて棲みたりし多くの鳥類は、其の後四周よりの森林伐採に圧迫せられ、次第に中央に集まり、遂に現在の領域に追い詰められたるものなり。』

  •  富士山麓や木曽山中、日光などの今でいう探鳥地では、数里もの距離を上下してようやく見られるだけの鳥種を『無動寺より根本中堂、浄土院、釈迦堂を経て黒谷青龍寺に至るまで僅々数キロに足らざる、歩行容易なる参詣順路を辿りつつ、充分に見聞観察し得る便宜あるなり。』と、研究者にとっても得難い探鳥地であることを強調しておられます。

  •  それだけ沢山棲息していた野鳥は、何故見られなくなったのでしょうか。川村先生はこのことがあるのをおそれて、その保全について『叡山鳥類保護に関する注意』(イ)森林の保存、(ロ)害敵の駆除制圧、(ハ)人間の悪事を防止する手段、の3項目にわたって書いておられますが、この他に日本の森の回復をあげなければならないと、私は思います。

  •  日本の森の回復力はすごいと思います。戦後十数年にわたる乱伐の繰り返しで極度に疲弊し荒廃していた日本の森林は、この半世紀の間にそうした名残をまったく止めないほどに緑一色に回復しました。日本の地形と気候は、空き地があって3年も放置すれば雑草、かん木類が侵入、繁茂してやがては森に還る国柄なのです。

  •  京都の周りの山を見渡すと、冬でも黒々とした東山の照葉樹林に気がつきます。夏になると東山は見渡す限り緑に覆われ、昭和のはじめの頃まで禿山や柴草山だったなどとは想像も出来ません。緑が回復し、植生が豊かになるとその森に生息する生き物が多くなり、野鳥たちにも棲息しやすい環境となるのです。

  • その証拠に、最近身近な森でキビタキやクロツグミを聞くことが多くなりました。桂坂野鳥園では、三光鳥誌49号で森の回復と関連させて野鳥の増加を統計でもって報告しました。川村先生によれば、周りの森の乱伐により追い詰められて野鳥が比叡山に集中したとありましたが、その逆の現象が野鳥の分散をもたらしたということも考えなければならないと思います。


芦生の森が危ない  2002/9/22 

  • 芦生の森で異変が起こっています。地球温暖化の影響が目に見える形で現れました。ミズナラの巨木が虫害で立ち枯れているのを発見したのです。直径1mを超える大木が緑の季節に葉を赤茶色にして立ち枯れており、その根際には大量のキナコ状の虫糞が積もっておりました。

  • 6月5日の朝日新聞では、昨年8月に美山町・芦生の入り口でミズナラの虫害が確認され、地元の手で駆除された記事が載っておりました。私の友人の「芦生の自然を守り生かす会」の副会長である主原さんによると、この夏には芦生の演習林内に被害が広がる懸念が表明されていたのですが、現実のものとなってしまいました。その段階では小径木であり、まさか1mを超えるような巨木までがやられるなど夢にも思っておりませんでした。

  • これも主原さんの受け売りですが、害虫のカシノナガキクイムシは南方系の甲虫で、地球温暖化で生息域を広げているらしいのです。低地にも生えているコナラやカシの仲間は耐性がありますが、高地や寒冷地で生活してきたミズナラは全く耐性が無いようで、爆発的に被害が拡大しているようです。

  • 昨年の秋には福井県下の国有林の被害状況を見てきました。ミズナラはほとんど1本も残らず立ち枯れているのを見て林野庁に聞きましたが、原因は分らないとの返事でした。これまでは標高500m前後までの山域だったようですが、今年は600mラインを越えて被害が拡大したようで、帯状に赤茶色の立ち枯れが観察され、ドライバーからの問い合わせが相次いでいるとの事です。

  • 害虫のカシノナガキクイムシは、6月上旬から7月下旬頃木から出てほかの木に移るとされており、その頃の高温が拡散を助けるようです。今年も昨年に続いて6月は高温が続き、20日までの最高気温は平均で3℃以上も平年を上回りました。標高が100m増すと気温は0.6℃下がるとされているので、3℃で標高500m上がっただけの影響が出るわけで、このような年が数年続くと害虫のカシノナガキクイムシは芦生全域に拡散され、芦生の森は壊滅的な打撃を受けることになります。

  • 主原さんによると、今年すでに100本以上の被害木を確認しており、絶望的だと言っておりました。大径木1本に恐らく50,000匹以上寄生しているものと思われ、来年は1,000本に拡大するだろうとの事です。彼は今5000万円の金があったら駆除できると言っていますが、私には金があっても駆除は不可能としか思われません。根本原因が地球温暖化にあるのですから。

  • ミズナラが姿を消す事により、ミズナラと共に生活していた沢山の生き物が絶えることになります。たとえばゼフィールスの仲間はどうでしょうか。また、ミズナラと共生していたマイタケなども見られなくなるでしょう。

  • 私にとって芦生の森の巨樹老木は神に近い存在であり、巨樹には森の精が宿り限りない安らぎを与えてくれる存在でありました。ブナの実は数年前から発芽能力を失ったと彼が言っておりました。そして今度はミズナラです。あの巨大なミズナラが、わずか数ミリの昆虫によって枯らされるなど、この目で見るまでは信じられませんでした。


八丁平  2002/5/20 

  • 1年ぶりに八丁平を訪れました。朝3時の空は快晴でミルキーウェイが横たわり、アルタイル、ベガ、デネブの夏の大三角が頭上に輝いておりました。人工衛星のラッシュを楽しみにしていたのですが、間もなくガスがかかって星空は消えてしまいました。

  • 録音ポイントの暗がり谷まではヨタカの声を聞いただけで、タゴカエルの声すら聞いておりませんが、どうやら気温が低すぎたようです。気温は放射冷却で6℃まで下がりました。

  • 夜明のコーラスは4:21に始まりました。日の出30分前です。クロツグミが一番に歌います。コルリが伴奏します。ジュウイチ、ホトトギス、ツツドリ、カッコウなども鳴き始めました。オオルリはデュエットで歌います。コマドリ、ミソサザイ、が加わります。ウグイス、モズ、アカゲラ、アオゲラ、コゲラ、ゴジュウカラ、ヒガラ、シジュウカラ、ヤブサメ、アオバト、アオジ、トラツグミ、クロジ、マミジロ、イカル、カケス、ハシブトガラス、ハシボソガラスなども聞きました。でも、数が少ないように思われました。

  • 多いのはウグイスとカラスと鉄の鳥です。ウグイスは尾根筋までびっしりと棲んでいてそのけたたましい鳴き声は録音妨害です。湿原の北寄りの群は大変下手糞で聞いていられません。南寄りは概ね上手なものが多く、中でもフノ坂から下りて来たあたりのものが一番上手です。この分布は昔から変わっておりません。

  • カラスは両方とも棲んでいて、カアとかガアとか品がありません。鉄の鳥は3時台からひっきりなしで、気にしていたら録音が採れないほどです。何かあったのでしょうか。

  • 途中ではキツネ2頭に出会いました。湿原ではシカを5回で6頭見ました。いずれもメスですが、そのうちの1頭は、私のコールに応えて長時間録音に入りました。仲間だと思ったのでしょうか。シカは随分増えたように思います。


花の山旅(常念・大天井・燕)  2001.7.26 

  • 昨夜、恒例の山旅から帰ってまいりました。ここ数年、7月下旬には2泊3日の白山の山旅を楽しんでまいりましたが、今年は北アルプス常念→大天井岳→燕岳→中房温泉の旅でした。とことん天気に恵まれ、ずっと三日間槍穂高の展望を欲しいままにし、コマクサも縦走コースでふんだんに鑑賞できました。

  •  燕山荘の赤沼さんに聞いたところによると、7月に入ってからは少しも雨が降らないので、季節が10日は早くまわっているということでした。例年ですと7月10日ごろから春の花が咲き、20日頃から夏の花、8月1日からは秋の花が咲くのだそうです。登山地図によると、8月中旬まで残雪があるはずの奥北燕(2723m)には、全く雪は見とめられませんでした。もう秋の花が咲いているとのことでしたが、夏の花もまだまだ元気で、コマクサは一泊目の常念小屋から大天井岳・燕岳と縦走コース全域にわたって切れ目なしに見られました。尾根を境にして東側には高山植物が多く、西側にはハイマツが広がり、その間の砂レキ地にはコマクサが多いのは、季節風と積雪量の違いによるものと思われました。あの可憐なコマクサは、厳冬期の寒さにも、夏の乾燥にも強いのですね。尾根の反対側には冬は大きな雪庇がつき、深い積雪が高山植物たちを守っているようです。

  •  鳥は特別珍しいものは見られませんでしたが、圧巻はやはりハリオアマツバメでしょうか。時速270kmもの猛スピードで自由自在に尾根をかすめて飛翔するのには圧倒されました。尾根筋にはイワヒバリが多くいて、ヒバリの名に恥じない長々とした良い歌を聞かせてくれました。カヤクグリやホシガラスもあちこちで声を聞き、姿も何度か見られました。キジバトとハシブトガラスが2500mの尾根まで上がってきているのには驚きました。イワツバメもハリオアマツバメに負けまいと飛びまわるのですが、スピードが違います。

  •  鳥の種類は2100m前後の樹林帯が一番賑やかでした。キクイタダキ、ルリビタキ、コマドリ、ヒガラ、カワガラス、ウグイス、メボソムシクイ、ミソサザイなどです。1500m前後にはオオルリ、ルリビタキ、コマドリ、ミソサザイ、キセキレイなどか聞かれましたが、個体数は多くはありませんでした。

  •  このコースは、高山蝶が多い山としても知られております。なかなか静止してくれませんので、しかとは判別できませんでしたが、ミヤマモンキチョウ、コヒオドシ、ベニヒカゲ(クモマ・・・?)、タカネヒカゲ、クジャクチョウ、キアゲハなどが尾根筋を飛びまわっておりました。驚いたことには、アサギマダラが5頭も3000m近い尾根筋まで上がってきて高山植物(マルバダケブキ)の蜜を吸っており、デジカメの望遠で撮ったアサギマダラとクジャクチョウが結構見られるぐらいに写っておりました。  


芦生夜歩き録音紀行  2001.5.28〜29 


芦生原生林・冬だより  2000.1.19 

  • 例年だと深い雪に覆われて入山出来ない厳冬期なのですが、昨年暮れに積もった雪は一月に入ってからすっかり解けてしまいました。数日前からいくらか冬型の気圧配置になり、ちらちらした雪がうっすらと日陰に残っておりました。

  • 快晴無風、気温はマイナス6℃ぐらい、霜の付着した小枝が青い空をバックにキラキラ輝いております。静かです。空にも森にも鳥の気配がありません。杉尾峠に向かうあのぬかるみは、今は完全に凍っていて、歩くとみしみしと心地よい音をたてます。

  • お目当ての「シモバシラの木」は見つかりませんでした。シモバシラはシソ科の植物ですが、冬の気温が非常に低い日に、枯れた茎から板状の氷(霜柱)をのばし、薄いガラス細工のような変化に富んだ美術品をずらりと並べて驚かせます。鏃型、矢羽型、軍配型から、曲面をまとったワイングラス型、ランプのほや型などいろんな形があって、実に不思議な景観です。

  • お昼頃ようやくカラ類の群に遭遇しました。ゴジュウカラ、ヤマガラ、シジュウカラ、コゲラ、ヒガラ、コガラなどの十数羽の群が、ヤドリギだらけのミズナラの梢を渡っていきました。


ルリビタキ  1999.11.10 

  • 今日は朝から快晴無風という好天に恵まれました。午前中時間があったので苔寺の横を流れる西芳寺川に沿って散歩したら,今年初めてルリビタキに出会いました。  最初のルリビタキは姿を見せませんでしたが,すぐ近くで鳴いていたルリビタキは,杉の木の枝に姿を見せました。♀でした。ジョウビタキの地鳴きとの区別が,何となく分るような気がしました。3番目のルリビタキは地鳴きと囀りの両方をやってくれました。明らかに♂です。ところで♂と♀の地鳴きでの区別はつくのでしょうか。私には同じように聞こえました。

  • 日当たりの良い場所にはヤマノイモが葉を黄色に染めて目立ちます。ムカゴが付いているとつい手を伸ばして採取してしまいますが,晩秋の山の幸としては美味な山菜です。図鑑を見ると雌雄異株で葉は対生とあります。ムカゴは両方に付くのか,また葉が互生のものが結構あるのが気になっておりました。

  •  ムカゴは両方に付くのが分りましたが,扁平な翼が3枚ある果実がついている雌株の蔓には少ないようです。回りくどい言い方をしましたが,果実がついていない雌株は私には区別がつかないので,どうなんだろうという疑問が残りました。

  •  冬鳥ではミヤマホオジロ数頭の群と,カラ類を中心に留鳥が観察されました。林道の日当りの良い場所には,成虫越冬するウラギンシジミ,ムラサキツバメ,テングチョウ,キタテハなどが見られ,樹上ではアオマツムシが夏の元気は何処へやら,わびしく鳴いておりました。  


ようやく秋が来ました  1999.10.19 

  • しばらくご無沙汰してしまいました。その間にも芦生の原生林にはせっせと通い,昨日ついに秋を見つけてまいりました。冬鳥のご到来です。

  • 早朝6時,地蔵峠を越えてアトリが次から次へとやってまいりました。10羽,30羽,50羽とひっきりなしにおしゃべりをしながら原生林に入って行きます.ここ数年見なかったほどの数です。

  • 長治谷に開けた空をヒヨドリが渡ります。こちらのほうは纏まりがなく,ばらばら,ばらばらと続きます。合計で100羽を越えました。

  • 今日は芦生の秘境地帯である天狗岳へ登りました。道のない薮山で大変でしたが,迷いながらも無事帰ってまいりました。尾根筋には鳥が少ないものらしく,ゴジュウカラの声を聞いたぐらいでした。

  • 今芦生はツキヨタケの季節です。ぶなの枯れ木や倒木にびっしりと生えております。一見美味しそうに見える茸なので,中毒する例が多いそうです。ご用心下さい。


アサギマダラの夏はもうすぐ終わりです。  1999.8.30 

  •  8月23日は蓬莱山頂でびわ湖の眺めを楽しんだ後,ダイナミックコースを下りました。スキーコースの草原には昨日まで気がつかなかったススキが一斉に穂を伸ばしており,谷間のテンニンソウまでもが花穂を持ち上げておりました。一方ヨツバヒヨドリはすっかり花が終わった場所もあり,全体では95%の花が終わって醜い茶褐色の姿に変わってしまいました。森の中にはリョウブが所々花を残しておりますが,多くの樹木では花期を終え,代わってホツツジが花穂を伸ばしております。
  •  このままだとびわ湖バレイは早晩食糧難に陥り,アサギマダラはこの地を捨てて残暑の激しい南,あるいは西へと旅立つことになるでしょう。
  •  8月13日,14日のアサギマダラの様子はお知らせしましたが,その後の出現数は依然として衰えてはおりません。8月28日には写真家を案内して,パラダイス(ダイナミックコース1100m〜1050m)のあたりで遊びましたが,数百頭ものアサギマダラが乱舞するあの情景は皆さんにもお見せしたいものです。求めに応じてアサギマダラを網で集め,50頭ぐらい入ると網が重くなるので,構えたカメラの前で一斉に放蝶するわけです。  一旦ネットインしたアサギマダラは興奮しているので殆どが遠くへ飛び去ってしまいますが,空になった草原には両脇の森の中からアサギマダラがさらさらさらさらと流れ出してきて,すぐに前の賑わいが戻ってくるのです。
  •  8月は明日で終わります。手元の資料で概算集計してみたら,びわ湖バレイでのマーキング数が2000頭を超えているのがわかりました。今年は仲間を増やすことに重点を置いて,多くの方に体験したいただきました。来年からの仲間が増えることを期待しています。
  •  総捕獲数に占める最捕獲数の割合を,最捕獲率と呼んでおりますが,8月下旬に入って再捕獲率が20%に近づいてまいりました。昨年は最高で40%ぐらいだったと思います。

  •  今,びわ湖バレイには沢山のアサギマダラが終結して旅立ちの日を待っているように思えます。びわ湖バレイの南から西にかけては1000mを越える山が無いのです。もうしばらく続く残暑を思うと,旅立ちをためらう気持ちが分るような気がします。


白山は今花盛り  1999.8.5. 

  • 白山のお花畑を全部巡って,高山植物を堪能してきました。

  • この夏初めて晴れて御嶽山が望見され,夜は星が良かったという日の翌日,8月3日早朝に白峰村に着きました。標高1200mの別当出合い駐車場で朝食をとり,歩き始めると早速ヨツバヒヨドリが出迎えてくれました。アサギマダラの好きな花で,比良山では開いている花が少ないのに,白山では満開でした。

  • 高山に咲く花の鮮やかさには,何度見ても感動させられます。それぞれに高山の空気のように澄んだ色をしているのです。「白山花ガイド」で確認できたものだけでも85種もありました。

  • ホシガラスはハイマツの松かさをくわえて飛びまわっておりましたし,イワヒバリやアマツバメも時々姿を見せました。メボソムシクイとルリビタキ,ウグイスは,一日中囀っておりましたし,山麓のぶなの森ではクロジとコマドリを聞きました。

  • 蝶ではクジャクチョウはすばしこいので写真を撮るのは大変でしたが,ベニヒカゲのほうは近くでじっくりと観賞できました。別山からの下りのぶなの森では,優雅に飛ぶアサギマダラを8頭も目撃しました。

  • それにしても良く歩いたものです。3日間で合計24時間にもなりました。疲れはしましたが,思いっきり汗をかいたあとは,オーバーホールしたみたいに爽やかです。 お天気にも恵まれました。アルプス展望台からは,右からオンタケ,ノリクラ,ホダカ,ヤリ,ヤクシ,タテヤマ,ツルギなどが望見され,稜線からは日本海が見下ろされました。

  • それでは咲いていた花の一部を色別にメモしておきます。

  • 黄色い花:シナノキンバイ,ミヤマキンポウゲ,ミヤマキンバイ,ミヤマダイコンソウ,ニッコウキスゲ,ウサギギク,ミヤマタンポポ,オタカラコウ,カンチコウゾリナ,ミヤマコウゾリナ,ミヤマアキノキリンソウ,オオバミゾホオズキ。

  • 白い花:アオノツガザクラ,キヌガサソウ,チングルマ,ゴゼンタチバナ,オンタデ,ヤマブキショウマ,イワオオギ,ウメバチソウ,ミツバオウレン,センジュガンピ,イワツメクサ,ハクサンイチゲ,イワイチョウ,ミヤマダイモンジソウ,ヤマハハコ,ノリウツギ,ウラジロナナカマド,カラマツソウ,モミジカラマツ,オニシモツケ,イブキトラノオ,ヤマホタルブクロ,イワハゼ,コケモモ。

  • ピンクの花:ハクサンフウロ,タカネナデシコ,ハクサンコザクラ,シモツケソウ,カライトソウ,ヨツバシオガマ,テガタチドリ,ハクサンチドリ,コイワカガミ。

  • 青・紫の花:タカネマツムシソウ,ミソガワソウ,タテヤマウツボグサ,イワギキョウ,ソバナ,ミヤマリンドウ。


赤坂山  1999.7.6 

  • 赤坂山で金黄花(キンコウカ)を見てきました。山渓の図鑑によれば「花の色からこの名がついた」とありますが,期待していたよりは地味な花でした。たわわに垂れる稲穂を「黄金の波」と表現しますが,それよりは黄金色だったかも知れません。

  • 赤坂山は湖西のマキノ町にあります。若狭,越前,近江の三国境にある三国岳のすぐ隣にある800m余りの山ですが,雪が多いせいか北方系の植物が多いようです。このキンコウカも図鑑によれば「中部以北」とあり,この地にあるのは例外のようです。

  • 途中クロツグミやオオルリの声を聞きました。エゾミドリシジミやウラクロシジミも多く見ました。オオバキスミレの残花もありましたし,ツルアリドオシの白い花が小さく可憐でした。京都北山や比良山系ではほとんど白い花のヤマボウシの,赤紫の花が目立ちました。

  • 山上からみる400本のメタセコイアの並木道は遠目にも見事でした。紅葉の季節にもう一度訪れたいと思いました。


タヌキ  1999.6.14 

  • 話題としては季節はずれのような気もしますが,昼間にタヌキの紳士に出会いました。JR保津駅から,嵐山へ続く尾根に登る途中,見とおしのいい植林地の谷を隔てて50mの地点を歩行中のタヌキを見つけました。

  • 体長80cmはあろうかという大物で,こちらには気がついていないようでした。例によって「おーい!」と声をかけました。こちらに向けた顔はまさにタヌキで,両頬にふさふさとチンチラの髭をまとった紳士でした。首を傾けてしばらくこちらを見ていましたが,間もなく歩いて姿を消しました。野生動物に出会うと心が和みます。

  • 尾根に出ると爽やかな風が吹いておりました。蝶の姿や鳥の声に足を止めながら嵐山へ向かいました。尾根筋から分れて下りにかかって間もなく,獣糞に集まった9匹のオオセンチコガネに出会いました。どうやら宴会でもやっているらしく,賑やかにふざけ合っておりました。近くをキビタキがブリブリブリッ,ヒー,ヒーを繰り返しながら通りすぎて行きました。

  • 尾根筋には花が無い季節です。

  • 鳥:オオルリ・クロツグミ・キビタキ・コガラ・イカル・ホトトギス

  • 蝶:アカシジミ・ミズイロオナガシジミ


アサギマダラ  1999.6.11 

  • びわ湖バレイにアサギマダラ観察に出かけました。打見山頂は薄曇で16.5℃でした。例によって定点に腰をかけて,近くに来たものを捕獲し,標識して放蝶し,行動を観察します。

  • 12:00〜14:00の間に16頭を目撃し,内9頭に標識しました。

  • アサギマダラはスキーコースのヨツバヒヨドリの新芽の香り(?)に惹かれてやってくるらしく,スキーコース両サイドのタニウツギやヤマアジサイの花には関心が無いようです。

  • 視界を蝶が飛びます。鳥の声も賑やかです。山腹には白い花が目立ちます。

  • 花:タニウツギ・ホウノキ・ヤマボウシ・コアジサイ・ヤマアジサイ

  • 鳥:ウグイス・オオルリ・コルリ・ホオジロ・キセキレイ・アカゲラ・ホトトギス・ミソサザイ・アオゲラ・シジュウカラ

  • 蝶:ウスバシロチョウ・スジグロシロチョウ・サカハチチョウ・アサギマダラ・キマダラヒカゲ・イチモンジチョウ・モンキチョウ・コミスジチョウ・テングチョウ


三光鳥がようやく来ました  1999.6.8 

  • 今年はサンコウチョウの様子がどうも変だったのです。毎年やってくる宇治白川にも炭山にも,そして私のフィールドである西芳寺谷にも気配が無いので,変だ変だ,サンコウチョウはどうしたんだろうと心配していたのです。

  • サンコウチョウは京都野鳥の会のシンボルバードです。FさんもYさんも「未だこない未だこない」と待っていたサンコウチョウが,ようやく西芳寺谷にやってきました。

  • 「梅雨の晴れ間」とのことで,苔寺裏の西芳寺谷に散歩に出かけました。涼しげなカジカの声を聞きながら,去年営巣した2km地点まで遡行して,諦めての帰り道です。10分間に3声しか聞けませんでしたが,よく鳴く夜明にもう一度出かけようと思っております。ひょっとすると宇治のほうにも来ているかもしれませんね。

  • 昨日の雨で湿った林道には,蝶たちか゛沢山姿を見せました。ウラギンシジミ,ルリシジミ,ムラサキシジミ,テングチョウ,ルリタテハ,オナガアゲハ,スジグロシロチョウなどです。

  • コオニヤンマが翅をきらきら光らせながら飛び交っておりました。トンボは他にも3種ほど見ましたが,名前には自信がありません。

  • その他見たり聞いたりした野鳥は,オオルリ,ヤブサメ,ウグイス,カケス,ヒヨドリ,キセキレイ,シジュウカラ,コゲラなどです。


1999.5.31  月光の芦生の森 


  • 久しぶりに夜の芦生を散歩しました。満月の夜に移動性高気圧に覆われるという幸運に恵まれて,急遽思い立って日曜日の夕方からやってきたのです。車中で仮眠した後,録音機を携えて夜中に歩き始めました。足元の小石まで見える明るさで,満月ってこんなに明るいものなのかと驚きます。もちろん灯りを点けるような無粋なことはしません。月明かりとコノハズクの声が,森をいっそう静かに感じさせてくれます。

  • 途中から林道は谷沿いになります。ヨタカやトラツグミはあちこちで鳴いています。カジカの合唱も水音の静かなところで収録しました。コノハズクが近くにやってきました。20声ほど鳴くと場所を変えるようです。

  • ケヤキ坂には2時頃着いて,林道を離れて山道に入りました。木の下陰でいくらか暗くはなりましたが,ほとんどライトなしでも歩けます。その頃からケモノの気配が濃くなりました。ほとんど鹿のようです。鹿はガサガサと音を立てて少し遠ざかり,「エウッ」(誰だ!)と声を出します。私もすぐに「エウッ」と応えます。「こんばんわ」のつもりなのですが通じないらしく,鹿はふたたび「エウ」(誰?)と聞いてきます。私は馬鹿の一つ覚えで「エウ」と応えるしかありません。そんな遊びまで録音にとって歩いているので,倍以上時間がかかってしまうのです。

  • 標高939mのブナノキ峠で少し休んだ後,尾根を東に向かいます。4時頃から急に賑やかになってきました。すぐ近くでカッコウが歌の練習をしています。どうしたものか声がかすれるのです。時々澄んだ声が出るのでそのうち歌えるようになるのでしょう。クロジは一番個体数が多く,いろいろな歌を聞かせてくれます。コルリ,クロツグミ,ツツドリ,アオバト,イカル,エナガ,ヒガラなどが収録に協力してくれました。

  • 遠くに聞こえていたアカショウビンが頭上のミズナラの巨木にやってきました。私の口笛に寄ってきたのですが,姿は見えません。他にもいるようで,遠くでも聞こえています。

  • 7時頃長治谷に戻ってきました。珍しくノジコが囀っています。良い声です。この季節のノジコは前例が無かったのではないでしょうか。

  • 10時頃には帰宅して朝風呂浴びて・・・・・。なんて贅沢な山行だったのでしょう。お天気に合わせて散歩できるのは,最高の贅沢なのかもしれません。


百里ケ岳(931m)  1999.5.18 

  • 百里ケ岳は里からは望見できない,山深い遠い山だったようです。かってはテント泊が必要な登山対象だったようですが,最近道路が拓かれて,片道1時間で日帰りできる身近な山になってしまいました。

  • 滋賀県と福井県の県境にあるこの山へは,県境の根来坂からアプローチするのが最短のルートですが,この間の尾根の若狭側が,新緑の美しいブナ林へと回復してきました。30年から50年生のまっすぐなブナが林立して今が一番美しい年代のようです。

  • 野鳥もなかなか多く,カッコウ,ツツドリ,ホトトギス,クロジ,クロツグミ,オオルリ,ヒガラ,シジュウカラ,ゴジュウカラ,コマドリ,コルリ,ミソサザイなどの山地性の鳥の声を多く聞きます。

  • 春の花の季節は過ぎてしまいましたが,オオイワカガミの残花や,チゴユリ,ユキザサなどの白い花が目立ちました。


三宅島に行ってきました  1999.5.14 

  • 京都野鳥の会の特別企画例会で,36名の参加がありました。(5/10-13)

  • 3日目の朝,暗いうちに出かけて坪田林道上部(250mH)で夜明けのコーラスを聴きました。

  • アカコッコの降るようなピアニシモで始まったコーラスは,10分後の4:35にはメジロやコマドリが加わり,大合唱に変わっておりました。

  • 更に10分あとにはイイジマムシクイ,ミソサザイ,カラスバトなども加わり,ますます賑やかなコーラスへと展開して行きましたが,どうしたものかアカコッコは歌をやめて活発に飛び回り,地鳴きを聴かせてくれました。

  • 5時前にコーラスはクライマックスを迎えました。カラスバトが近くまで来てウォー,ウー,グルルルルーと低い声で唸り,ミソサザイは早口でソプラノを歌い,ヒヨドリ,ウグイス,キジバト,ハシブトガラスまで加わっての大合唱です。判別出来ない声も3種ほどありました。

  • 5時15分頃山を下りて富賀浜へ出ました。(5時44分)海岸の草原ではウチヤマセンニュウが囀っておりました。昼間とはくらべものにならないくらい元気に歌っておりましたが,こちらのほうは仲間がいないのでコーラスにはなりませんでした。

  • 三宅島にはオオルリ,キビタキ,クロツグミなどの歌い手がいないので,単調な夜明けのコーラスに思えましたが,本土から遠く離れた小さな島の,特徴的なコーラスだったのかも知れません。

  • 聴き慣れない声も多かったので,録音したMDは,三宅島自然ふれあいセンターアカコッコ館レンジャーの山本裕さんに聞いてもらってご指導頂く予定です。


三重嶽(974.1m)  1999.5.7 

  • 滋賀県北部にあり,地元の今津町では「サンジョウガダケ」と呼んでおります。

  • ヒョンなことから三角点ハンターのNさんと三重嶽に登る機会が出来ました。Nさんは二等三角点以上のある山を約750座も登った日本山岳会のファイターです。箱館山の北西約6kmにある三重嶽は,登山道のない険しいヤブ山で,こんなことでもないと登る機会のない山です。

  • その昔は里山の一部だったらしく,株だちになったブナやミズナラの大きな樹が目立ちました。中でも三角点近くの30本も株だちになったブナの姿は奇異でさえありました。

  • けものみちを辿ってのスリリングなヤブ山歩きでしたが,シャクナゲ,タムシバ,オオカメノキ,カタクリ,ミヤマカタバミ,イワウチワなどの残花もあり,楽しい一日でした。ただ,夏鳥たちが少ないのはさびしい気がしましたが,雪が多いこの地方では夏鳥の到着も遅れるのかもしれません。


ブナの森では新緑が燃えています。  1999.5.3 

  • 鳥の仲間と芦生に出かけました。小鳥たちの夜明けのコーラスを聞き,日中はブナの森を彷徨し,そして夜は山野の珍味を山盛りにして乾杯をしました。

  • 芦生には今年はクロジが多いようです。その他コマドリ,コルリ,クロツグミ,オオルリ,キビタキ,センダイムシクイ,ヤブサメ,ツツドリなどの夏鳥たちと,地元のゴジュウカラ,ヒガラ,ヤマガラ,シジュウカラ,ミソサザイ,アオバトなどが元気でしたが,コガラが少ないのは気になりました。声は出しませんでしたがキバシリも姿を見せてくれました。

  • ブナの森の林床には草花が春を運んできておりました。ミヤマカタバミ,イワウチワ,オオイワカガミ,ヒトリシズカ,ヤマエンゴサク,イカリソウ,ミヤマキケマンなどですが,イワウチワは大きな群落となり,足の踏み場もないほどでした。

  • 樹木ではタムシバの花も残ってはおりましたが,この季節はシャクナゲが女王様です。咲いた直後の濃いピンクの時がなんとも言えず艶やかなシャクナゲの青春です。オオカメノキ(タムシバ)の白い花も目立ちました。

  • 春の女神といわれるギフチョウにも何度か出会いました。気温が上昇していたせいか,活発に動き回っていて,じっくりとは観察できませんでした。

  • ブナの森は新緑が一番美しい時です。根来坂の近くのピークから360度展望して比較すると,若狭のブナの山波の新緑が一番見事です。見渡す限りのブナの森で,しかも30年から50年の若いブナが中心になっていて,黒木がほとんど混じっていないのです。近江の側には植林地が多く,芦生の原生林にはアシウスギの大木が多く混じります。


八丁平 パート1  1999.4.30 

  • 早朝2時に家を出て,今年初めての八丁平の録音に出かけました。天気は良かったのですが一面に霜が降りていて,鳥はあまり囀ってはくれませんでした。クロツグミ3,コマドリ2,コルリ3,ゴジュウカラ1,ツツドリ1,トラツグミ1,アオジ1,フクロウその他留鳥多数。


雷鳥たちと遊んできました。  1999.4.29 

  • 春山スキーの立山から帰ってみたら,プロバイダからメールが届いておりました。インターネット再開です。その間にも季節はすすみ,花も山菜も盛りを過ぎて夏鳥たちが賑やかにやってまいりました。

  • 3/30 西山にワラビが出始めました。山菜を探しながら耳では鳥を聞いております。ウグイス,コジュケイ,キジなど,この土地の鳥たちです。

  • 4/16 西山にウドが出始めました。ヤブサメもやってきています。

  • 4/17 西山のカタクリが満開です。

  • 4/20 美山町でコゴミがいっせいに芽を出しました。ツツドリはポポッと一声だけ。カジカガエルもソロで歌い始めました。

  • 4/21 西山が夏鳥たちで賑わっております。オオルリ,コマドリ,ヤブサメ,クロツグミ,センダイムシクイ,キビタキ,ツツドリなどです。

  • 4/26〜28 立山,剣の辺りを滑り歩き,ライチョウ,イワヒバリ,カヤクグリなどと遊んできました。声をかけると嫌がらずに近寄らせてくれるのです。3日間快晴に恵まれ,日焼け止めクリームや覆面の効果もむなしく,醜いまでに日焼けしてしまいました。気温もぐんぐん上昇して,水分を多く含んだ表層の雪があちらこちらの急斜面で雪崩れを起こしておりました。こういう重い雪は,歩くにしてもすべるにしても大変くたびれます。


コブシの花が咲いたよ  1999.3.25 

  • 京都西山は春たけなわです。黄色い絨毯の菜の花畑,田んぼをピンクに染めるレンゲソウ,スミレ,タンポポ,ホトケノザ,オオイヌノフグリなどが山麓に春を運んできました。

  • 山間に入るとイワナシがピンクの花束で,冬を越したクマバチを招待しておりましたし,ショウジョウバカマは赤紫色の蕾がピーナッツぐらいに大きくなっておりました。山腹に白いのはコブシの花です。見上げる尾根のカタクリやギフチョウも気になり始めました。

  • 姿を見せたベニマシコはどうやらペアになっているようでした。

小春日和に出かけよう  1999.3.21 


  • 比良山南麓の栗原のあたりは,棚田,比良山の雪嶺,眼下の琵琶湖などの冬景色の美しいところです。

  • この冬は,越冬している昆虫を観察するため,数日間この辺りを歩いてみました。

  • あらゆる工夫を凝らして鳥の目から逃れている昆虫たちは,なかなか人の目にはつきにくいもののようでしたが,野鳥の数が多く喜ばされました。群れと呼びたいほどのツグミやシロハラ,カシラダカ,ミヤマホオジロ,アオジ,ジョウビタキなどが沢山いて,時々上空をタカも飛びました。小春日和の一日を,のんびりと過ごすにはいいところです.


春よ来い!  1999.3.17 

  • 「5月中旬の陽気」という天気予報に誘われて出かけました。

  • 美山町の由良川支流に入ると,まだたっぷりの残雪で,長靴をはいてザックザックと歩きました。鳥の気配は意外に少なく,ミソサザイだけが声を張り上げて,春を歌っておりました。上空をクマタカが飛んでくれましたが,期待していたカシラダカの合唱はまだ聞けませんでした。昨年の春,シイタケを3kgも収穫した由良川本流の流木が,昨年の豪雨で流されてしまっていてがっかりでした。天然のシイタケは,三月から四月にかけて一番多く発生するのです。河原の流水の中から,セリを少々頂いて帰りました。三月中のセリはアクがなく,柔らかくてその上香りも最高です.いよいよ山菜シーズンの幕開けです。


冬の薮原 鳥便り  1999.2.10 

  • 伊藤会長さんの庭の餌台には,いろいろな小鳥が訪れますが,一番多いのはゴジュウカラだそうです。私がおたずねした日は,どうしたものかシジュウカラとコガラ合わせて20羽ほどが,賑やかに遊びまわっておりました。

TOP