天野君の鳥だより   '99 2.11 〜 '99 2.14

 99年2月11日

 学校から帰ってきたら大阪のM村さんから留守電が。「やばい奴が出たで!ゾウゲカモメや!」・・・なぁあーーーーにぃーーーー!急いで電話して場所を確認する。「青森。」・・・グヘッ。なんですとぉ〜?私の目の前からゾウゲカモメの幻が飛び立って遠ざかっていく・・・。

 とりあえず公共の交通手段で行けるかどうーか調べてみるとどうも行ける事は行けそうだ・・・。でもつらそう・・・。今回はやめよっかな、と思ったがM村さんの「こんな奴二度と見れへんぞ!」と言う言葉が耳に残る・・・。ぐはっ、そうかも・・・。

 これを逃したらまた寒い冬の北海道をほっつき歩き「オホーツクの地縛霊」とか言われかねない。ただでさえ「初田牛の地縛霊」の異名を欲しいままにしている(?)のに。ぬおー!これを見送って常識のあるバードウオッチャーになるか、青森まで走ったクレイジーバーダーとして名を残すか、人生最大の分かれ道であった。(うそつけ。)

 しかも青森まで走って行ってもゾウゲカモメがまだいるとは限らない。しかし、当時筑波大学の大学院にいたKさんが連休を利用して行くと言う話を聞いて、ついふらふらと行ってしまったのであった。青森へ・・・。Kさんははっきり言ってかなり迷惑そうだったが大人気なくむりやり同乗させてもらった。夜につくばに集合して車でひたすら粉雪の舞う高速道路を爆走した。

 朝早くになって現場の鰺ヶ沢漁港に着いた。港に着くとKさんが叫んだ。「あっ、ゾウゲカモメ!」目の前を飛んでいるではないか!おおっ!とりあえず車で追跡。すると港に下りている。

 そこへ後続のウオッチャーが次々到着。京都のIさんに大阪のK村さん、K西さんだ・・・。顔を合わせるなり「何で青森まで来ていつものメンバーやねん!アホばっかりやな!」と言われてしまった。

 みんなでとりあえずゾウゲカモメと記念撮影。幼鳥なので真っ白ではないがまさか見れるとは思っても見なかった鳥が目の前にいるのは不思議な気分だ。鼻水を垂らしながらずっと見ていた。だって次いつ見れるか解らないんだモン。

 港にはクロガモやらアカエリカイツブリやらミミカイツブリやらが浮かんでいて、砂浜のところでハヤブサオオセグロカモメを捕らえて食べていた。

 そのあと十三湖というとこに足を伸ばしたらオオワシオジロワシが氷の上に立っていたり、300羽あまりのカワアイサをはじめとするカモ類をみたりした。堤防の上にカモメ類がいてホイグリンカモメが一羽いた。

 この日は八戸に住んでいる大学の先輩の家に泊めてもらった。翌日はKさんとは別行動だ。八戸の方にアラナミキンクロコケワタガモが出たという話があったからだ。でも結構前の情報なので期待はしてなかったが。とりあえずこの夜は先輩と大学の思い出話をして楽しく過ごさせてもらった。

 ・・・しかし。事態は急変。大雪だった。それもただの大雪じゃなくアメリカ風に言うと「スーパーグレイト大雪」くらいすごかった。(小学生か!)先輩には「悪いこたいわねぇから今日はやめた方がいいよ。」と言われ、さらに「こんな大雪の時に来るなんて運がいい奴だな。」とまで言われてしまった。・・・確かにやめた方が良さそうだ。でもっ、でもねっ、予約してるの、夜行バス・・・。

 一転して吹雪の青森で11時間ぐらい過ごさなければならなくなった私は青森駅でボッサーっとした。思いっきりボサーッとした。一生のうちこれ以上はないくらいボサーッとした。本屋で立ち読みしたり、おみやげ物屋を5往復したり。人間11時間ももてあましてもボサーッとできるモンですね。もうしたくないけど。

〜エピローグ〜

 後で知ったけどこの吹雪の日、連休だったため多くのバードウオッチャーが来たらしいのですが、なんと例のゾウゲカモメが海上で死体で発見されるというとんでもないハプニングがあったのは有名な話。1日早くて危機一髪・・・。

 99年2月14日
 千葉県小櫃川河口
 いつものようにマジメに学業をこなしていると、関西の知り合いから情報が舞い込んできた。「小櫃川にチシマシギがいるらしいんやけど、ちょっと突っ込んできてくれへん?」とのこと。チシマシギとな・・・?

 チシマシギって言ったら冬の北海道の岩礁で寒そうに群がっているアレでしょ?名前からして寒そうな雰囲気120%だ。しかしこの「千葉にチシマシギが越冬しているらしい」という噂は前の年から流れていたため、確認しに行くことにした。しかし、北海道で越冬しているはずの鳥が、関東のしかも干潟に来ているとはわけのわからん話だ・・・。

 休みを待って出かける。とはいっても当時私が住んでいた藤沢から小櫃川のある木更津は電車で行くと2時間半はかかる・・・。私は小櫃川に行ったことがなかったので、のんびり出かけたのだが、木更津に着いてバスの本数の少なさに鼻水が出るほど驚いた。自分が着いた時にちょうどバスがあったが、次のバスは数時間後だった・・・。危なかった・・・ふう。

 とりあえず最寄のバス停に着いたが、河口まではやや距離があり、迷子になって泣きそうになった。道に迷うこと数度、川に落ちそうになったり、ぬかるみにはまりそうになったりしながらなんとか河口にたどり着く。河口にはぽつんぽつんとウォッチャーがいた。シロチドリミユビシギハマシギが群れているのが遠くに見える。チシマシギはあの群れの中か・・・。

 干潟に着いて歩いていくと、知り合いのA山さんがいた。なにか見ていたのでそっちの方を見たらハジロコチドリが歩いてた。おお、かわいいのう、と思ったらその後ろをニシトウネンが歩いてた。これを見ていたらしい。

 一段落ついたところでA山さんに話し掛けると、一緒にチシマシギを探し始めた。程なくしてハマシギの群れの中にチシマシギを発見。・・・でも遠い・・・。ハマシギよりちょっと大きくて黒い・・・。とりあえず確認は出来たので満足する。干潟を後にして歩いてたらA山さんたちが車で来てもう少し上流の方にコスズガモがいるから見にいかないかと誘ってくれた。「いいんですかぁ〜?」などと言いながら眼をギラギラさせてすばやく車に乗り込む。後で聞いたらA山さんと一緒にいた人のうちの一人は大学のサークルのOBだった・・・。

 問題のポイントにはカモ類が結構な数で群がっていて、ヨシガモの個体数が多いのが印象的だった。コスズガモをさがすがスズガモの個体数も結構多いので大変だ。そうこうしているとA山さんが綺麗なアメリカヒドリを発見。ヒドリガモとの雑種が多い今日この頃、純粋なアメリカヒドリは結構見る機会が少なくなっているので嬉しい。

鼻血が出そうになったその時「コスズガモいた!」との声。すっかりA山さんにおんぶに抱っこにアッパーにストレート(?)でノックアウトされそうだった。(なんのこっちゃ。)しかもコスズガモは成鳥だった。うおお、久しぶり。コスズガモなんて不忍池でしか見たことないからなぁ。

 その後A山さんたちに浦安に連れて行ってもらってチュウヒを何羽も見たりして、そのまま浦安の駅まで送ってもらって例のバスに待たされることもなく家に帰る事が出来た。鳥にも人にも会えて楽しい一日だった。

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