天野君の鳥だより《番外編4》
ナンヨウショウビンに会いにいく旅(与那国編)
 さて,気持ちを切り替えるとは言ったものの,ナンヨウショウビンをゆっくりと見てかなり満足したので,もうこれから行く与那国はオマケ状態でふにゃふにゃしながら空港に着くと,なんか悪天候で飛行機が遅れると表示されていた。

 やることないので売店のほうに行くと与那国在住のMさん(新婚)がいた。今日泊めてもらう家の主だ。出張かなんかでどっかに行っていて(何もわかってないぢゃん。)今日与那国に戻ると聞いていたので,空港で会いそうな気がしていた。

 Mさんは同じ大学の同じサークルの出身だ。以前から与那国勤務を希望していて,ついに去年4月から勤務が決定したそうだ。ちなみに新婚家庭なのできゃああ,と思わずほほを赤らめたのだが(意味がわからん) ,今は奥さんは与那国に引っ越してくる準備で熊本の実家に戻っているのだそうだ。奥さんのほうがMさんよりもハードなバーダーなので一緒に鳥見したかったのだが。

 早速寄っていくと,実は午前の与那国行きは欠航したのだそうだ。にゃにおう?!(←?)私は午後便なのでそのまま飛べば乗れるのだが,Mさんは午前の便だったのでキャンセル待ちにされてしまったと言うことだった。そんなに与那国の天候は悪いのか・・・。

 結局午後便は,遅れたものの飛ぶことが出来ることになった。しかしMさんは乗れるかどうかまだわからない。Mさんは「もし俺が乗れなかったら俺んち泊まってていいから。」・・・って,ちょっと!「ああ,鍵ね,壊れてて閉まんないから大丈夫。」

 ダイジョーブじゃねーっすよ。一週間ぐらい家空けてたんじゃなかったですかい?「与那国だから。」と,こともなげ。さすが与那国。「与那国だから。」最強の決め台詞だ。カッコ良過ぎる。

 先にチェックインして「一人で車の中で寝るのかなー」なんてドキドキしていたら,Mさんがゲートに入ってきた。おおっ,野宿脱出。聞くとキャンセル待ち最後の一人だったそうだ。危うく野宿の危機を免れた。(野宿なんてなんとも思ってないくせに。)

 結局飛行機が遅れたので与那国に着いたらもう真っ暗だった。Mさんと二人で夕食を食べに行ってその日は早く寝る。明日は何が見れるかなー・・・。



12月22日

 今日はMさんは仕事なので一人でまわることに。

 朝からあまりイイ天気ではない。とりあえずもう定番となったシベリアセンニュウのポイントに向かう。この日は風も強くてあまり条件も良くなかったせいか,時々声が聞こえたくらいだった。チョウセンウグイスもムジセッカも居るがあまり鳴かない。泣きそうなのはこっちだよ。とほほ。

 後で聞いたら強風で島に物資を運んでくるフェリーも欠航してしまうくらいの荒天だったようだ。この船が来ないとスーパーの品揃えも寂しくなってしまう。まぁのんびりしに来たってことで(ほんとかよ?)その辺に11月くらいからずっといるナベヅル(沖縄では珍)でも見ようかな,と思って車を動かしたら遠くにでかい鳥が飛んでた。ナベヅルぢゃん。

 そのあたりの電線にジャワハッカが6羽止まっている。島で調査をしているUさんによると今は6羽しか居ないとのこと。時期によっては100羽近くも居るときもあるのだが。相変わらずファンキーな顔だ。ギンムクドリも1羽一緒にいた。真冬の与那国って沖縄本島のようにムクドリ類がもっとたくさん越冬しているもんかと思っていたが,予想に反してムクドリ類は非常に少なく感じた。

 なんにせよ今年の冬の鳥の少なさは全国的らしいのであきらめて(早ぇーよ。)東崎のほうに向かう。ゴミ捨て場や学校のグラウンドなども見てみたが何も居なかった。祖内の牧草地を通りかかったらなんか猛禽が。ハイイロチュウヒの♀だ。マダラとかじゃないかなーと思うのは鳥屋の性でしょうかねー。じろじろ見てみたがどう見てもハイチュウでした。ハイチュウにしても沖縄県内ではやや珍鳥の部類に入るんだけどね。

 この強風や寒波できっと変な鳥が来ているに違いないとドキドキしながらあっちこっちまわってみたが別に何にも居なかった。11月にはユキホオジロが出たくらいだから(当然沖縄県初記録ですな。)ケワタガモでもシロフクロウでも何でもきやがれ!(いねーよ。)心の準備だけは万全である。(とても悲しい響き・・・。)東崎の放牧場でマミジロタヒバリが6羽居たくらい。

 比川を通って久部良方面へ。比川の集落内の道でマミチャジナイが死んでいるのを発見。かなり綺麗な死体だったのでこれ以上車に轢かれないように草むらによけておいた。比川の水田地帯も見てみたがノビタキが一羽いたくらいだった。

 久部良に向かう途中の水田地帯では今度はタシギが一羽轢かれて死んでいた。念のため見てみたが他のジシギ類ではなかった。

 そのまま久部良ミトにカモ類を見に行く。カモ類は意外とたくさん入っていた。キンクロハジロ,カルガモ,コガモが中心だがハシビロガモ,オナガガモ,ヒドリガモなどまるで本州のようだ。(うう・・・カモの群れが懐かしい・・・。)

 中に沖縄ではレアなホシハジロが一羽混じっていた。おおっ,うれしいような,悲しいような。数少ないスズガモもいる。内地人としては,ビミョー・・・。あとハジロカイツブリ(これも沖縄貴重種)もいると言う情報はあったがなんか知らんけどこの日は見れなかった。まぁいいや。あっ,コウライアイサの幻覚だ。半透明のリュウキュウガモもいるぞぉ,ウフフ・・・。

 だんだん意識が遠のいてきたので久部良の港のほうへ行く。

 ありゃあ何だ?カモメが何羽も居る。全部ウミネコだが7羽も居れば立派な群れだ。沖縄でカモメの群れとは驚きだ。近寄っていくとUさんがこのウミネコを見ている。そしてその隣にもう一人怪しい人が居る。長髪のその男は与那国にしょっちゅう出入りしている変態(ほめ言葉)のSさんだった。もともとはバッタ類やカマドウマの研究をしているそうだが最近はかなり鳥も見ているという。以前一度与那国で会ったことがある人だったのですぐに打ち解けた。

 Uさんと情報交換したが今はやはり何にも居ないらしい。3人で話をしているとき,私がさっきマミチャジナイの死体を見たという話をしたらSさんが目を輝かせて欲しがっていたので車に乗せ,タシギの死体とマミチャジナイの死体の場所へ連れて行った。Sさんは死体を見るなりきゃあきゃあ言って大喜び。「これだけで今回与那国に来た甲斐がありました。」とまで言ってくれた。

 普通の人ならちょっと引くかもしれないがこーゆー人種には慣れているので大丈夫だ。むしろ観察して楽しい。なんかSさんは今日与那国を発つというのだが,この風で飛行機がまた欠航になるかもしれないとのこと。とりあえず一緒にカレー屋さんで昼を食べて宿に送る。

 Sさんをその後空港まで送り,「飛行機が飛ばなかったら連絡してね。」と言って祖納に戻る。田原川に戻ってくると川辺でサンカノゴイがびっくりした顔してたので車を停めずにそのまま通過してあげた。

 そのままMさんの職場を見てみたかったので行ってみたが,Mさんは鳥でも見に行ったのか居なかったので(家に戻ってご飯を食べていたらしい。)仕方なくそこらへんでうろうろする。海岸でタカラガイや変なものを探したり(鳥モード終了?)山のほうに入ったりしてみた。

 森のほうに行くと結構キマユムシクイなどが見られた。沖縄本島ではこの冬まだ一回も見ていない。その辺はさすが与那国だなぁ,と思いながら車を停めてメジロの群れを眺めていたら松の木に小さな鳥が飛んできた。内地で培った直感ですぐにわかる。「キクイタダキだ!」双眼鏡で捉えたその鳥は沖縄で見るのは実に11年ぶり(俺って何者・・・?)のキクイタダキだった。

 車から降りて周りを探すと5羽くらい居るようだった。沖縄では結構珍しい鳥だ。おそらく与那国では記録が多いのだろう。11年前に見たのもここ与那国だった。山の中で一人で感動を噛みしめていたら(あれ?キクイタってそんな珍鳥だったっけ・・・?)Sさんから電話。「飛行機欠航しましたー。」なんでうれしげやねん。

 空港までSさんを迎えに行き,キクイタの話をしたら,沖縄で鳥見をはじめたSさんはまだキクイタダキを見たことがないと言う。これは見なくちゃ!シベリアセンニュウ見ても別に・・・ってリアクションでキクイタでこの盛り上がり・・・。僕たちなにか間違ってませんか?空港から現場までまた戻り,待つこと3分でキクイタ再登場!無事にSさんも見ることができ,満足満足。

 その日はその後Sさんの案内で与那国ではぶっちぎりの美しさを誇るU浜に連れて行ってもらい,カツオノエボシとかギンカクラゲとかのくらげ類が打ち上げられているのや外洋性のウミアメンボが大量に打ち寄せられているのを採集したりしているSさんを観察して楽しんだ。自然って不思議だ・・・。ウミアメンボは外洋を漂うミズナギドリの抜け落ちた羽根に卵を産みつけるらしいですよ。

 夜は仕事を終えたMさんと一緒に食事に行き,風がやむことをねがって早めに床についた。



12月23日

 今日はMさんが島を案内してくれる予定だ。天気もよくなって太陽が出てきた。気温も上昇し,お昼寝モードに突入だ。(今起きたばっかりやろ!)

 さっそく田原川に行くとUさんもいて,無風で暖かいためかブッシュでは鳥たちが大騒ぎしていた。シベリアセンニュウは最低4箇所からさえずりが聞かれたし,チョウセンウグイスはそれ以上に鳴いている。

 ムジセッカなんてブッシュの上を追いかけっこしながら飛んだりとムジセッカとは思えないアクティブさだった。このブッシュだけでも5,6羽はいたと思うがこの日は島のあちこちでムジセッカの声が聞かれた。ほかにシマセンニュウも鳴いていたし,ムジセッカの中に地鳴きがちょっと違う者がいて詳しい人の間では(ボクはド素人♪)どうもモウコムジセッカの可能性があるらしい。

 その辺で鳥たちとたわむれながらUさんとMさんと話していたら島で調査をしているUさんもこのときまだキクイタダキを確認していなかったらしく,みんなで昨日の場所へ探しに行くことになった。途中,比川の水田のそのへんに生えてる木にノスリが止まってた。与那国はノスリの出現頻度も高い。本島ではまだ見たことが無い鳥だが。(与那国に居ると珍鳥の感覚が狂ってくるよね☆)

 ・・・しかし・・・。今日は待てども待てどもキクちゃんは現れない。そのかわりに(?)昨日までは居なかったアトリやマヒワが見られたりミヤマホオジロに話しかけたりして遊んでた。(自分は昨日見てるから集中してない。←悪い人。)

 やること無いので(ゼイタク?)久部良港に行くとウミネコの数が減っている。暖かくなったので移動したんだろうか?港内にはウミネコに混じって一羽のセグロカモメが居た。綺麗な成鳥だった。沖縄で綺麗な成鳥はなかなか見られない。

 久部良ミトではこれまでと同じカモ類の中にハジロカイツブリが居るのをやっと確認。あちこち回って別にたいしたものは居ないので樽舞湿地のほうに行くと与那国でははじめて見たオカヨシガモとヨシガモが居た。また沖縄ではあまり見られないマガモ(こんなんばっかり。)も見られた。なんだかうれしいような悲しいような探鳥行が続く・・・。変態のSさんは今日は飛行機が飛ぶというのでイヤイヤしながらも帰っていった。

 Sさんのこれからの変態を祈りながら(なんじゃそりゃ?)Mさんと林道のほうを走り回っていたら道路わきの側溝になにか鳥が居るのが目に入った。Mさんに車を停めてもらいシロハラかなんかかなぁ?と思いながら側溝をのぞくとミフウズラだったあるよ。(誰?)本島にもいるけど,何度見てもカワイイ・・・。近づくと飛ばずに側溝の中を歩いて逃げていく。Mさんと面白がって追いかけて遊んでいたらさすがに飛び上がって藪の中に入っていった。

 昼にMさんの家の近くのお店でそばを食べて,午後どうしよっかナー,みたいな話をしていたら「午後は天野一人でまわってね。」とさらりと言われてしまった。ガーン。ヒドイ・・・。

 Sさんも帰ってしまったし,一人になったのでひたすらうろうろするが別に何も居ない。セグロカモメの成鳥が珍しいので久部良港で「フェリーよなくに」をバックに入れて写真撮ったれ,と思い四苦八苦するが近すぎてフェリーが入らなかったり,シャッターを切ろうとすると急に飛んだりと芸能人気取り。(そうなの?!)結局フェリーはバックに入れられず途中で疲れたので根負けして退散。樽舞湿地でもう一度カモ類を確認するがやっぱ同じで変なのは居なかった。

 気温が上がって暑くなったのと多少眠くなってきたのでカタブル浜のところの大きなガジュマルの木の下に車を停めてお昼寝タイム。眠りそうになった瞬間に変態大魔王のYさんから電話がかかってきた。「金武にカリガネが来た!」とのこと。西表から消えたと思ったら・・・。変態の瘴気で目が覚めちゃったよ,もう。

 空を見ると2羽のタカが舞っている。双眼鏡で確認するとノスリとオオノスリだった。朝見たノスリだろうか・・・。どんどん高度を上げて遠ざかっていくので途中でどーでもよくなっちゃって(感覚の狂いが見られます。予後不良です。)もうちょっと寝る。

 天候の回復で鳥が抜けたのかあまりにも何も居ないので田原川のまわりの農耕地を散歩しながら小鳥類をストーキング。ガサガサっと茂みから大きな音がするので「ひょっとして,まさかして,クイナ類?」とドキドキしながら一歩踏み込んだら大きな猫が飛び出してきたので意表を突かれて鼻血が出そうになった。(なんでやねん。)

 農道を歩いている鳥が居るので寄ってってみるとタヒバリとムネアカタヒバリが一羽ずつ仲良くしていた。「俺も仲間に入れてー」と寄っていったが,「精神の崩壊が見られる」とかいう理由で走って逃げていってしまった。不当解雇だ(怒)。

 みんなが逃げていくので車に向かって引き返しているとヒヨドリやシロガシラたちがこっちに向かっていっぱい飛んできた。ちょっとうれしいくせに「君たちとは仲良くなれないよー」とか言おうとしたら,その後ろからオオタカの若が突進してきていた。おわー!オオタカ!沖縄ではっきりとオオタカを見るのは初めてかもしれない。懐かしいなぁ。久しぶりに見たらすごくでかく見えた。後で聞いたらこの辺に居ついている個体らしく以前から見られているとのことだった。

 日没も近づいてきたのでシベリアセンニュウのいるところに来て変な鳥が現れるのを待っていると,背後の休耕田にアカガシラサギが一羽立っていた。「よっ,久しぶり。」と言って無視。朝と同じようにシベセンやムジセッカ,チョウセンウグイスの声を聞きながら日が暮れていく。こののんびり感が与那国の癒しなのだ。

 Mさん宅に戻るとMさんは「いやー,お昼すぎから呑んじゃったよー♪」とか言っていい顔してた。Mさんは後輩よりもお酒が好きだ。(涙)「後輩が 飲めない僕で すみません。」(一句詠んでる場合かい?)

 昨日は風邪気味だったということもあり,お風呂を遠慮させていただいたので,この日はお風呂を借りることにしたのだが,Mさんが,「あー,うちは打たせ湯方式だから。」と呪文を唱えていた。なんのこっちゃ,と思いながら見てみると,シャワーヘッドが無かった。

これじゃあただのホースぢゃないですかい?



翌24日。

 与那国最終日。現実に引き戻されるー。

 朝からMさんがお酒も呑まずに付き合ってくれる。だが,ふたたび天気は下り坂だ。中学校の横を通りかかったとき,グランドからヤツガシラが飛び立った。「イヤイヤ,12月だから。」とすかさず突っ込んでしまった。

 この日はどうしたことか昨日までは一羽も居なかったヤツガシラが久部良の中学校でも2羽,ゴミ捨て場でも1羽見られ,計4羽も確認できた。渡りが始まっちゃったの?

 しかし結局これ以上の成果も無いまま空港に向かう時間が近づいてきた。「よーし,残された時間で大物を見つけて一発逆転満塁ホームラン打ってやる!」と思った瞬間,Mさんが「あ,空港までは見送り行かないから,ここで。」と,育児放棄されてしまった。お酒呑む気だ・・・。そして「家無き子」になった私は夢も希望も失って泣きながら飛行機に乗り込んだのであった・・・。

 後日,Mさんにお世話になったお礼として,シャワーヘッドをお送りしたことは言うまでもありません。


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