2005年11月。沖縄の新聞に載ったナンヨウショウビンの画像はこれを見た鳥屋を震撼させたに違いない。 最近沖縄ではナンヨウショウビンの越冬記録が増えてきているが、そうは言っても未だかつてこんなにしっかりと姿を捉えられたナンヨウショウビンがいただろうか。いや、いない。そしてこれを見たほとんどすべての人が鼻血か下血かどちらかを経験しただろう。(どっちかしかないの?)とりあえずもうなんか、行くしかないぢゃん?って頭の中のちっちゃい悪魔が回っている。 「冬休みはここで取れ」的な休み日程に行くアテもなくホロホロしていたので、当初北海道のナキハクチョウ突っ込んだろか!と思っていたのだがチケットを取るときにちょうど一時行方不明になっていたため、ナンヨウショウビンを迷わずチョイス。(今思えば大寒波で帯広なんか行ってたひにゃ無言の帰宅になっていたかもしれないねッ☆)ちょうどチケットを取った日に現場のK船長に電話すると「今見てきました。今日は良く出ていますよ。」とのこと。いいぞ、ナンヨウショウビン。 しかし・・・ 一週間ほど後に出発を控えたある日船長からの一通のメール・・・「ここ3日間出ていません。抜けたかも。」(プライバシー保護のため音声を変えてあります。)(←?)ここで思い出すのは3月にピンポイントで外したハイイロオウチュウです。考えてみたら私は西表であまりいい思いをしたことがない。 鬼門!まさに鬼門西表!学生のころクロウタドリに苦労をたどり、レンカクの幻覚を見た鬼門、西表!やっぱり神様はぼくのことが嫌いなんだぁぁぁ・・・ しかしここでさらに起死回生の現場の船長からのメール(もはやメル友)「いい知らせです!今日一度だけ出ました!」出発3日前でした。 そして12月18日、その後の情報には耳をふさいでさっさと飛行機に乗り込むのであった。 天候はあまりよくなく鳥が移動するとは思えなかった。近くに必ず居るはず・・・。飛行機を降りてすぐに西表行きの高速船に乗るためタクシーに乗り、ほとんど余裕もなく飛び乗るようにして出航。船からKさんに電話すると「11時発の遊覧船に乗れますか?僕が船長なんですよ。」とのこと。時間を見ると船が到着してから10分くらいしかない。ぐへっ。10分でレンタカーをかりて船着場まで行かないといけない。時間に間に合うか?しかしこんなチャンスはない。20日に船を借りてくださったとはいえ見られるとは限らない。「乗ります!」 久しぶりに時間に追われるような気分でレンタカー屋の事務所に転がり込み、「ナンヨウショウビンひとつ。」などとボケている暇はなかったのだが、免許証が見当たらなくてかなり焦った。バタバタで車を借りて短い距離をぶっちぎって走り降りていくと、「どーもー。」と聞き覚えのある声。「船長!(涙)」まるで生き別れた父に出会ったような心強さだ。父と生き別れた経験はないが。 出航までにはまだ2分くらいあったのでナンヨウショウビンが良く出るポイントを教えてもらい、「おぬしもワルよのう」みたいな感じで話し合い船に乗り込んだ。でもここ3日まったく出てないらしい。一番後ろの席に座り、風除けのビニールシートを船長の許可を得て「鳥見のために開け放つ権」を頂いた。これで一般観光客がこごえ死んでも大丈夫だ。(大丈夫なのかな?)そしてこんなにも人が必死に急いで来たにもかかわらず、団体の観光客が10分くらい遅れてきやがった。ちくしょー、俺のダッシュに必要だったカロリーを返せ!最近カロリー控えめにしろって言われてるんだぞ!(なんのこっちゃ。) 出航してすぐにカリガネが居たという、そして今は誰も居なくなった海岸を見つめる。・・・切ない。「前は居た」・・・鳥屋にとってこれ以上切ない言葉はないね。うう・・・。さぁマングローブ帯に入ってきた。涙を拭いて前を見よう。しかし西表の森はイイ・・・。ヤンバルの森とはまた違う魅力がいっぱいだ。ナンヨウショウビンが出没するあたりに差し掛かると船長が合図を送ってくれた。川岸に横たわる倒木や岩などに見入る。船長も左右に目をやって必死に探してくれているようだ。 しかし結局往路ではナンヨウ君を見つけられず、折り返し地点に到着してしまった。ゴフッ。(吐血)天候や風の強さ、潮の高さによって現れる基準があるのではないかと話し合ってみたが、傾向があまりはっきりしていないようだった。手強い。しかしカニを主食にしている様子からこの日のように気温が低く風が強い日は良くないように思える。 程なくして観光客の皆様が船に戻ってきたので折り返し。最もよく現れていたポイントにはやはり見られず、なかば「20日にすべてを託そう」、そう思ったときだった。 なんじゃありゃあ!!! マングローブの根元に空色の物体がぁ!!私の目はマングローブの膝根にとまる空色の物体を捉えていた!無意識に双眼鏡を向けるとそこにブルー&ホワイトな雪だるまみたいなヤツが佇んでいた!もうこの瞬間記憶を失うほどのインパクトの中で大きな嘴が見えたときには観光客に遠慮もなく無意識に船の縁をガンガン叩いていた。(迷惑)。おそらく声にならない叫びをあげていたと思う。(すごい迷惑。)船長は気付いているのか!?とはっと我に返ったときには船長と目が合い、笑顔を交わした。ワールドカップ行きを決めた日本代表のように走りよって抱きつきたかった。(かなり迷惑。) 後で聞いたのだが、いつもの遊覧のコースを少しずらしてもらって前に一度ナンヨウ君が居た場所のそばを通過してくれたのだそうだ。しかも・・・。 「みなさん、珍しい鳥が居ますよ。綺麗な鳥でナンヨウショウビンといいます。」と、なんと船長、オキテ破りの遊覧船バック!!!い、いいのか〜?!こんなことして!!さすが船長、アイラブユー(ハート) 船が戻ってきたのでナンヨウ君もびっくりしたのか一度上のほうの枝に移ってしまったが、ちょっと待っているとひらりと舞い降りてカニを捕獲し、バキバキに叩きつけて食っとるではないか!なにぃーーーー!? 一般の観光客もきゃあきゃあ言っている。おめーら騒ぐんじゃねぇ!(自分は散々騒いだけど。)カニをたいらげるとナンヨウ君はまたひらりと上のほうの枝に飛んでいってしまった。 前に座っていたおばちゃんが「やっぱり南洋的な色よねー。」って言っていた。どんな色だよ、それは。(笑) 船長とアイコンタクトしてOKサインを出すと船は帰路についた。もう帰りの船は放心状態。 こうやって書いているだけで当時の興奮がバシバシ蘇ってくる。というか記憶もぶっ飛んでしまうくらいのインパクトだった。写真もあんなに見せてもらったし、東南アジアでナンヨウ君一回見てるんだけど、なぜ?? 船着場に着くと下船時に船長と握手!船長の会社の人たちも「見れたの!?」とすごく驚いておられた。それほどここ数日のナンヨウ君の出現率は低かったのだろう。 もう船長には抱きついたろかと思ったけど別の意味で変態だと思われるとやばいので握手にとどめておいた。ナンヨウショウビンもさることながら、私が忘れられないのは現れたときの船長の笑顔だった。あんな笑顔を見せられたらお世話になった私の方がいい事したような気がしてしまうではないか。船長、どこへでもついていきます。っていうかKさん家の三人目の子供になる。(出たぁー!強引な養子縁組。) 船を下りて、とりあえずこの日はホテルパックで取ったホテルに泊まるため西部方面へ行くことにした。(明日から泊めてもらうKさんちは東部。)その前に大原で友達のお兄さん夫婦がやっている「満八食堂」でお昼ご飯を食べていく。 石垣からの連絡船をおりて10分でレンタカーを借り、ダッシュで乗った遊覧船。この船じゃなきゃ見られなかった。Kさんじゃなきゃ見られなかった。もう一本遅い飛行機で着てたら見れなかった。Kさんに「奇跡ですよ。」と言われ(この日のほかの遊覧では一回も出ていない。) ご飯を食べながら一人、じんわりと感動を噛み締めていると鼻や口から涙がキラリ☆もー、なんか、この後の与那国とか別に何も出なくてもいいやぁーって気分になってきた。というか絶対に今回これでもう運使い果たしてるって。(初日2時間にして・・・。)といっても実際結構寒くて風もビュービュー吹いてるので小鳥類なんかほんっとに居なかった。せめてムラサキサギくらいは西表なんだから見たいなぁと思って走っていたがこれもはじめはなかなか見られなかった。12月の西表って初めて来たけど、こんなに固有種が見づらいとは・・・。 とか思いつつ走っていたら道路の上をカラスバトが飛んだ。亜種ヨナクニカラスバトだ。個体数は多くない。っていうか少ない。道路から見れるポイントも限られている。ラッキー。しかし八重山のカラス小さすぎ!(オサハシブト)ハトかなんかかと思うぢゃねーかっ! 船浦湾を見ながら走っていたら白い鳥が飛んでいた。「おっ、オニアジサシとかかな?」と思ったらウミネコだった。後で港のほうによってみたら突堤に2羽止まっていた。 住吉牧場を見てみるとマミジロタヒバリが4羽ほど居た。無視。その向こうにアヤシイハクセキレイがいた。うーーーーん・・・。なんだこいつは?顔はどう見てもハクセキだけど胸や雨覆いの模様が見たことない。多分、日本未記録亜種かなぁ?写真を撮ろうとしたが遠いのと暗いのでまったく使い物にならなかった。・・・わかんない。どうでもよくなっちゃった。えへ。 裏にある池にはカルガモやヒドリガモなどカモ類が少し入っていた。草の陰にもう少し隠れているようだ。明日の朝来れば多分みんな出てきているだろう。昔夏にツルクイナを見た浦内の湿地帯に行くとここでやっとムラサキサギが見れた。私の好きな干立の集落に来たら入ってすぐの芝生の上にズグロミゾゴイがさりげなく立っていた。あんまりじろじろ見ていると首をすくめててててて・・・と走り去っていった。雨で人があまり居ないからか3羽くらいのズグロミゾゴイが集落内を闊歩していた。 それからお気に入りの白浜旧道に入ろうとしたら台風のがけ崩れで通行止めになっていた。むむむ・・・。その辺の田んぼでタシギを発見。どー見てもただのタシギだった。 結局その後もうろちょろしてみたがハイタカが一羽飛んだくらいで特にこれといった成果もなくホテルにチェックイン。夕飯と風呂を済ませてからナイトをちょっとだけやってみたがとにかく風が強くて全然ダメでした。本当にリュウキュウコノハが鳴かない日なんて西表にはありえないと思っていましたが・・・な、鳴いてない・・・。泣いているのは俺だけか?帰り際に月が浜でヤマシギがぴゅっと目の前を横切った。 翌12月19日、6時に目覚ましがなり、西表の祖納のホテルで目覚める・・・。が、外はまだ真っ暗。6時半くらいには明るくなるだろうと思っていたが待っても待っても明るくならない。ようやく明るくなりはじめたのは7時ごろになってからだった。昨夜ゴーゴー吹いていた風はおさまり、曇り空の隙間から青空が顔を出していた。 明るくなるまでに荷物をまとめ、出発。キンバトに逢いたくて通行止めの白浜旧道を途中まで走ってみたがほんっと何にも居ないの。シロハラの声が聞こえた。本島にはシロハラさえも来ていないよ? ちょっといじけながら(早ぇーよ)折り返し、ホテルの前を通り過ぎて干立に行く。集落に入ろうとしたら路上の水溜りでシロハラクイナが逃げないでうろちょろしてたので車を止めると水溜りから大きなミミズを拾い上げて持って帰ってた。 早朝の人気のない集落はズグロミゾゴイがやりたいホーダイやっていた。お前らいい加減にしなさいよ。道路の真ん中で羽繕いとかやってんじゃねーっつうの。写真撮ったろかと思ったが明るさが足りなくて真っ黒になってしまった。ボツ。ズグロミゾと遊んでたら少し先の電線でフライングキャッチとかやっているちっこい変な子が。「ヒタキ・・・?」見てみるとエゾビタキだった。一応ムナフヒタキとかじゃないことを確認するためにスコープで見ながら「あのー。12月なんですけど?寒いんですけど?」と事情聴取してみる。 よく見るとこのエゾビタキ次列の後半部分と三列が脱落している。長距離は飛べなくて渡れなかったらしい。その割にはバシバシフライングキャッチしとるけどな。 その後浦内の湿地を回ってみる。すると道路の横の水路からでかい羽音がしてツルクイナの♂が飛び出してきた。ぬおっ。やっぱり居るんだ。ここはツルクイナ湿原と名づけよう。奥のほうにある水田にはセイタカシギが一羽ちょこんと立っていた。 次に住吉牧場の変なハクセキレイを探すが、ハクセキもマミタヒも消えて代わりにタゲリがいた。ほかにムネアカタヒバリが7,8羽飛んでた。裏の池では昨日見たカモ類が思ったとおり池の真ん中あたりに出て日向ぼっこしとった。西表ではあまり居ないと思われるキンクロハジロが。ほかに昨日は見なかったオオバンも2羽居た。 そこらへんでカンムリワシの写真を撮って宿に戻る。食堂に入ってくと宿の人がすごい暇そうにだらだらしていた。すみませんねぇ、お客俺一人で。 朝食食べて荷物もって宿をチェックアウト。ホテルの裏のちっこいビーチでちょっと浜を歩いてみたがタカラガイとかそーゆー楽しいものは落ちてなかった。ただしどっかから流れ着いてくるカショウクズマメとかっていう名前の豆がいくつもあった。アウトローバーダーな私は鳥が居ないとなるとすぐに脱線する悪い子なので海岸で少し遊ぶ。 うちの職場に変態ビーチコーマーがいるのだが、モダマなどがあれば拾ってきてやると約束して、ついでに「西表のお土産はなにがいい?」と聞いたらまじめな顔で「うーん・・・。イノシシの下顎骨とか。」って言いやがった。そんなもんがそこらへんに落ちとるかぁー!万が一落ちてても拾うかぁー!あほー!と思い出しながら歩いていたら・・・ ぎゃーーーー!イノシシの下顎骨が2つも流れついとる!もって帰るかどうかかなり迷ったが、空港で警備員さんに「なんですかこれは?」とか言われたら「ホネです。」としか答えられないので写メールだけとって置いてきた。後で聞いたらホネを持ち歩いている有名な人はあちこちで講演をするときに常にたくさんのホネを持って飛行機に乗っているらしいが一度も止められた事がないらしい。へぇーとは思うがそういう人にはちょっとなりたくないですね。(冷静。) その後干立をもう一度見てからツルクイナ湿原へ。もうツル君は見られなかった。ムラサキサギを無意味に見つめてたらサシバが急に騒ぎ出した。「ん?」と思って見上げるとサシバが空中戦をやっている。しかしよく見ると一羽はでかい。「おかしいな?」双眼鏡で見るとなんと、ハチクマだった。あれーーーーーーー? 「あのー。12月なんですけど?寒いんですけど?」とまた質問。しかもフツーに飛んでるし。何でこんなとこでこんな時期なの?わけわかんない。それにしても私は「内地では普通種だけど沖珍」を見つける名手のようだ・・・。なんか、びみょーにうれしくないような・・・。天気が良くなったせいかノゴマが遠くで鳴いている。シマアカモズも昨日はどこに隠れていたのかあちこちに居た。 その後は外国からの漂着物がたくさん来る中野の浜を歩いてみた。タカラガイはたくさんあったが同じ種類で普通のヤツばっかりだった。ここのごみはなかなか面白い。ほとんどが中国語かハングルが書いてある。ヨン様でも流れ着いてこないかね?(こねーよ。)ゴビズキンカモメでもいいや。(なんで?) 海上にはカツオドリがフラフラしてた。ここの浜にはいろんなものが流れてくるのがわかっているらしく私の前にもたくさんの人が歩き回った跡があった。タカラガイもイイヤツは先にひろわれてたのかもしれんとです。(急に九州弁。) 遠くにはビーチコーミングおやじが見られた。なんか、ものを拾っているオヤジってなんとなくリストラとかされたっぽーいイメージがある・・・。ごめん、おっさん。サラリーマンっぽい見た目だったから・・・。でも日本漂着物学会ていうのがあるらしいじゃないですか。学会には日本中のビーチコーミングおやじが密集してくるんですねー。楽しそう・・・。ビーチコーミングってちょっと楽しいです。 とりあえず、ナンヨウショウビンに会えたから余裕ぶっこいて海岸めぐりとかやって時間をつぶし、(だって鳥いないんだもん。)今夜の宿泊地、東部を目指す。 古見のワイルドライフセンターの下の田んぼでクサシギを見た。そういえば干立でも鳴いてたな・・・。他のシギは居ないようだ。ちぇ。アシナガシギとかいないかなー。(居たら一大事です。) 東部・大原まで戻ってきたので昨日と同じ食堂でお昼を食べて、東部の水田などを見てまわる。田んぼのほうに曲がるとすぐ横の水路にオオバンがいて、逃げ遅れたらしくアダンの下にあわてて隠れた。・・・が、ケツがはみ出て丸見えだった。茂みの中に頭は隠しているものの、あまりにもあわてすぎたのか体が半分丸見えの状態でフリーズしてる。ちょっとかわいいけどあんまりいじめてもカワイソウなのですぐに移動してあげた。 Kさんがケリが来ていると言っていたので軽く探すとすぐ見つかった。おおー、久しぶり。タゲリも4つくらいいた。 そのまま今度は一番南の南風見田の浜まで行く。別に何も居なかったが海岸にムラサキサギが立ってたのがビビった。クロサギかアオサギかとおもったらムラサキ。ムラサキサギが海に出てるのなんてはじめてみたのでビックリした。でも鼻血ぶーには至らなかった。海で鼻血ぶーするとサメが寄ってくるから危険です。 まだ時間があるので大富の林道のほうに入っていくことにした。お目当てはリュウキュウキビタキとオリイヤマガラ。途中まで行った所で車を停めて散策。 うろちょろしていたらメジロの群れがぱらぱらと飛んできた。サンショウクイとシジュウカラが混じっている中に一羽、怪しい動きをする鳥が。双眼鏡で見るとキビタキだった。やったね。でへへ。って、あれっ?このキビタキ変だぞ?すごく綺麗。はっきり見る前に飛んでってしまったが喉の黄色みがかなり強く、背中は真っ黒、これたぶんリュウキュウキビたんではなく亜種キビタキだと思われた。「きびたーん!」と叫んだが戻ってこないので口笛で鳴き真似をしてみたらメジロたちも全員居なくなってしまった。後ろでウグイスが「ちゃっ、ちゃっ。」って鳴いていた。「お前だけだよ、友達は!」と振り向いたらウグイスも「ちゃっっ?!」とか言い残して遠ざかっていった・・・。 仕方なく奥へ歩いていくと林道にイリオモテヤマネコのものと思われるウンチが落ちてた。小型哺乳類の毛が大半だったのでノネコのものではないと思うが・・・。どんどん奥に歩いていったが特に収穫はなく、「冬ってあるんだぁ。」・・・と実感。虫とか両爬が全然見れない。 そろそろ戻らんといかん時間が来たのでえっちらおっちら来た道を引き返す。だいぶ戻ってからヤマガラの鳴き声を聞いた。何だよ、ムキー。 大富の農耕地を少しあてどもなくまわってみたがこれといって何も見れなかった。 大原のほうに戻る途中に仲間川の橋を渡っていたらリュウキュウツバメが橋の下を飛んでいるのが見えた。10年くらい前までは八重山地方ではリュウキュウツバメはほとんど生息していなかったと思う。ここ数年で石垣で何箇所かで繁殖しているのが確認されているのは知っていたが、西表にも来ていたとは驚きだ。どれくらいの驚きかっていうと、デー○・スペクターが日本人だったくらいの驚きだ。(わかりにくいしおもしろくもないです。) まぁ、そんなこんなで驚きのあまり橋から転落しそうになりながらも(うそこけ)再び南下し、もう一度ケリがいる大保良田にやってきた。仲間川のヤッサっていう素敵なところに行ったりしながら戻ってきていると葦原からなんかが飛んで出てきた。あ、こいつは・・・!ただヨシゴイ(幼鳥)。沖縄では時々出るただヨシゴイ。去年見れなかったので2年ぶりだ。ちょっとうれしい。リュウキュウヨシゴイも見ずに変なものを見てしまった。またかよ・・・。 工事のダンプに轢かれそうになりながら大保良田の田んぼをうろちょろしていると、ツメナガセキレイの声がする。周りを探すと何羽か畑に下りていたが、すぐに飛んだのでストーカーごっこでついていくとその先の畑に15羽くらい集まって採餌してた。タヒバリとムネアカタヒバリの声もするので探すと1,2羽がツメナガセキレイの群れにまぎれてた。 田んぼの横の川みたいなとこに生えてる低い木にカンムリワシがぽーんと止まってて逃げる気もない様子だったのでその辺に車を停めて見ていたら、水際のイボタクサギの茂みからムジセッカの声がしてきた。そういえば与那国でもいつもシベセンと一緒にイボタクサギの茂みにいるよね。カンムリワシは無視してムジムジ君が出てくるのを待ったが、一瞬ちろっと出てきたくらいでかなりの恥ずかしがり屋さんのようだった。モジモジセッカ→モジセッカ→ムジセッカという風に和名がつけられたといううわさは 本当のようだな。(うそです。) だいぶ日も傾き、夕方になってきたのでそろそろKさんがお仕事が終わるころかと思い、電話をしてKさん家の侵入許可を頂いた。ワーイ。 田んぼから道に出ようとしたらちょうど正面の木にヤエヤマオオコウモリがぶらさがっていた。「おめぇぇぇ、まだ昼だぞぉ?」でもなかなか昼間撮影する機会もないのでチャーンスとばかりデジスコをセットした。しかし写真を撮ろうとすると目の前をダンプがブーーーンって通過する。コウモリは木の実を夢中でほおばって変な顔になっている。やっと撮ろうとした時にはなぜかシャッターが切れなくなっていた。「なぜ!!」デジカメの電池が切れやがった。役立たずぅ!うがあああ。 もういーよ、ふん。ってことで(どういうこと?)Kさん邸に走る。着いたおうちは去年2月に山猫のアンケートで一軒一軒訪ねてまわった住宅だった。(当時は別の人が住んでいたらしい。)海も見えて鳥も見えてサイコーな環境だ。 無事にKさんちに入れてもらえた。普通っぽくしておかないと退場処分にされてしまうかも知れないので気を遣った。(?)「はじめましてー♪」って奥さんに言われた。前も一回会ったのに・・・。(涙) その夜は家庭的で非常においしい夕飯を頂き、外国の図鑑で変なハクセキについて調べたり、ナンヨウショウビンについて作戦を練ったりした。奥さんは優しいし(美人だし)、子供たちは人見知りもせずかわいいし、ああ、家族っていいなぁ。(お前は家族ぢゃねーだろ。)でもKさんのお子さんはふたりともしっかりしていてとってもかわいかったですよ。下の子はまだ幼稚園なのにわがままもまったく言わずきちんとお父さんとお母さんの言うことをきいていました。ボクなんか大人なのにわがままばっかり言ってますからね。負けました。(ダメ人間だ・・・。) 上の子は敬語もしっかり使えてビックリしたし感心しました。自分が小学校3年生のときこんなにしっかり敬語しゃべれたかなぁ?野鳥の会には入ってたけど。(やはりダメ人間だ・・・。)Kさんの家庭は笑顔が絶えず、とってもあったかい雰囲気で満ちていました。 12月20日。 今日はチャーターしてもらったボートでナンヨウショウビンとデートだ。きっと鳥にしてみれば厄日だろう。でへへへ。とりあえず遊覧船が運行し始める前がいいよね?ってことで8時くらいからKさん家を出発。開店直後のガソリンスタンドを襲ってガソリンを購入。船ってガソリンで動くんだぁ。(そりゃそーだろ。)本来なら船のチャーター代も払わないといけないワタクシ。せめてガソリン代はワタクシが、と申し出たが、Kさんが半額でいいと言ってくださった。さすが家族。(だからお前は違うんだってば。) そんなこんなで(どんなだよ。)出航することが出来た。ルンルン♪ナンヨウショウビン居るかなー?ウキウキだ。幸先よくムラサキサギがその辺に佇んでいるのを見つけた。一番乗りの特権だ。 とにかくナンヨウ君の居住区を目指す。河口付近は風が強いが、マングローブ林の中のほうはほぼ無風で静かだった。船をゆっくり流しながらナンヨウ君を探す。いつもお気に入りの枯れ木や倒木など・・・いつ現れても鼻血を出せる準備をする。(もっと他の準備をしろよ。) ドキドキ・・・ドキドキ・・・ドキドキ・・・あれ? ・・・いない・・・。 「うーん。どこに行ったのかなぁ」とKさん。いつもの私なら「ぎゃーーーーーーーーーっ」と叫んで鳥見出して、いや、取り乱していただろうがこの日は違った。余裕ぶっこき。「ふっ、ナンヨウ君。居るのはわかってるんだ。武器を捨てて出てきなさい。」と刑事さん風に仲間川の中心で愛を叫んだ。(どこが!?) とりあえずその場では折り返さず、昨日からの約束で折り返し地点よりももっと上流の一般の遊覧コースでは行けない上流の方まで連れて行ってもらえることになっていたので上流へ向かう。実はこれもナンヨウと同じくらい楽しみだった。密林♪密林♪(←密林音頭。) モダマというおっそろしくでかいマメが河のほとりでグルグルとぐろを巻いているし、ヤエヤマヤシの群落が遠くに見えるし、秘境の雰囲気120%だ。自然に口から「すげー・・・。」という言葉が出てくる。っていうか言葉では表現できない 森の迫力がそこにはあった。傍から見るときっとアホの子みたいな顔をして船から流れていく光景を眺めていただろう。時々川岸の木々から驚いて飛び去るハヤブサや、「おいおい、船が来ちゃったよ」みたいな感じであわてて逃げていくカイツブリたちを見ながら河をさかのぼるノーチラス号。(この船そんな名前だったっけ?!ネモ船長〜!) 次第に水の色は透明になり河の中の魚たちが見え始める。テッポウウオ居ないかなー。 そしてとうとうアポロ108号は終点に着いた。(おいっ!船の名前変わってるぞ!宇宙船っぽいし!)ちょっと小休止、ということでアンカーをうって船を停める。青空と静けさ。無風。メジロやカラ類の呟きが聞こえる。このまま昼寝したら気持ちよすぎて二度と目覚めなそうな気がする・・・。 河はその先で突然渓流になっていてここまでしか船では入れない。「ここで泳いでみたいなぁー」と言ったら「レプトスピラ(細菌)がいるからやめたほうがいいですよ。」と言われた。ハイ、やめます。(素直。) 定時の遊覧船が折り返し地点を離れる時間を見計らって自分たちも再び河を下り始める。途中、モダマがたくさん自生している場所に降りて森の中を見てみる。これまた、すっげ。ヤンバルにもこんなのないよね。記念に地面に落ちていたナンテンカズラをいくつか拾って帰る。斜めになったおかしなサキシマスオウの大木も見せてもらった。そしてなんだか楽しんでいるうちにだんだん時間も押してきたのでナンヨウ君のところに戻る。 ところがなかなかナンヨウ君が見つからない。やっぱし初日で運を使い果たしてしまったんだ。初日に見たマングローブ林の裏にある細い水路にも入ってみたがナンヨウ君はいなかった。というよりもどこに居たっておかしくない環境がどこまでも広がっているのだ。かわいらしいヒヨっ子バーダーな私はだんだん気弱になっていった。 本流にもどり、少し捜索していると、Kさんが小さな声で「居た!」と叫んだ。初日に見た場所の対岸に当たる位置だった。しかもマングローブの奥に入っていて見えない。 対岸に船をつけて近寄ると・・・綺麗なスカイブルーが目に飛び込んできた!再会!風が強いからなのかマングローブの林内に少し入ったところでうろうろしていた。これでは外側からでは見つからないわけだ。よく見つけてくださったものだと思う。枝葉が邪魔してなかなか綺麗に見えない。とりあえず宿題としてデジスコで撮る、というのがあったのですが、@近すぎるA船が動いてる(揺れる)という条件で非常に撮影は困難を極めた。 画面にナンヨウショウビンがいっぱいに入ってしまうので少し船が揺れたらあっちゅうまに画面から外れる。こんなのデジスコできるかぁーーーーーーッ!近すぎるわぁーーーッ! Kさんもデジカメを出しているので撮るのかと思いきや、「今日の目的はナンヨウショウビンと天野さんを一緒に撮る事です。」とのこと。えーーーーーーっ?(←ちょっとうれしい。)学生のころよく「鳥と私」って普通のカメラで撮ってたなぁ・・・。「クビキンと私」とか「オオホシハジロと私」とか・・・。 どうにかこうにか私もデジスコで一枚だけ撮れて、まぁゴミ写真ですが・・・。ナンヨウ君もその辺を行ったりきたりしているようなのでナンヨウ君が近づいてくるのを待ちながら船の上で買ってあった弁当を食べる。弁当を食べているとハシブトガラスが寄ってくる。 その後船の周りで何度も飛んだり、カニを捕らえたりしてくれたのでかなり観察はゆっくりと出来た。私とナンヨウ君のツーショットも無事に撮影されました。 それにしてもあの目の覚めるようなブルーにはただただ感動だった。ちょっと枝とかが邪魔でゆっくり見えない時もあったけど高望みしてはいけない。Kさんには感謝、感謝です。 その後港に戻り車で東部の鳥見ポイントと海岸をたくさん案内してもらった。 昔アオショウビンが出た仲間崎とか、覚え切れないくらいたくさんのビーチ。Kさんと一緒に貝やモダマを探してまわった。 南風見田の浜に注ぎ込む川のようなところでリュウキュウアサギマダラやスジグロカバマダラがうじゃうじゃ居る場所があったり、そのあたりで流れ着いてくる様々な海外原産のマメや種子など非常に興味深いものをたくさん見つけていただいた。興奮しすぎて転んだ。 Kさんちの近くの牧草地みたいなところでハチジョウツグミを見て、Kさん家に帰着。まだ少し明るかったのだが、もう幸せいっぱいお腹いっぱいであった。奥さんに「鳥屋サンって明るいうちはもっとガツガツ見るものですよね?」って言われた。「あ、ぼくは普通っすから。」 その夜はご飯をお腹いっぱい頂いてから子供たちと遊んでゆっくり休んだ。 12月21日、この日はお昼ぐらいに西表を出発しなければならない。 Kさんは仕事なので自分もKさんの出勤と子供たちの学校の時間にあわせて出発する。重ね重ねお礼を言って出発。午前中しかないので西部まではいけないだろうと思い東部で徘徊。しかしこの日もまた天気が悪く気温も低いのであまり鳥の出は良くない。 ケリは健在。しかし大きくは顔ぶれに変化はない。一昨日見つけたムジセッカがまた居た。昨日は声もしなかったのに・・・。しばらく待ったがこの日は姿を見せてくれなかった。 そのあたりを少し回ってみたが何も居ないのでちょっと迷ったが、西部まで行くことにした。というか、美原か古見あたりまでいければいいか、と思って行けるところまで行こうと思って車を走らせた。しかし雨が強くなってきて鳥見には最悪の天候になってきた。船を借りたのが昨日でほんと良かった・・・。 ちょうど美原のあたりに来たら上空を結構な数のカルガモが飛びまわっていたので、なんだろう?と思いながら走っていたらカモの群れの後からハヤブサが飛んできていた。ところどころポイントで車を停めては鳥を探してみたが今日はほんとに何も居ない。 結局ずっと走っていたら住吉牧場まで来てしまった。一昨日みた変なハクセキレイなどを探してみたがやはり見つからなかった。結局、ネタになるような出来事もなく、最終日は終了。時間を見ながら東部に戻り、レンタカーを返却して港で船を待つ。 海は強風の影響で少し荒れており、いつもよりも時間がかかってちょっと気持ち悪くもなって石垣に帰着。空港に向かう途中そのへんの公園でホシムクドリが2羽芝生を歩いとった。 ナンヨウショウビンはかなり満足できる結果であった。次は与那国に行くことになっているので気持ちを与那国に切り替えねばならない。(つづく) |