国家試験の勉強をしなくてはならない私はそんな現実から逃れるため、姉、母と共に関西国際空港を飛び立った。
昼食を食べて腹いっぱいになり、ロイヤル・ネパール航空の飛行機に乗り込むと真っ先に昼食が出た。ぐふっ。すでに満腹やっちゅうの。 ネパールまでは上海経由やら時差の関係やらもあり9時間もかかったが、その間も間髪入れずスチュワーデスのオバちゃんによるジュース、ピーナッツ、メシ、ジュース、コーヒー、紅茶、メシ、ジュース、という連続攻撃にあって、肥育豚の気分を味わった。 上海ではいったん飛行機から追い出され、初めての中国でちょっとだけうろついた。空港内を。それにしても「加徳満都」と書いて「カトマンズ」と読ませるつもりか。もっとがんばれよ、中国人。 で、また同じ飛行機でカトマンズへ。正しくはかと-まん-どぅーなんですな。どうでもいいけど。そして現地時間で午後6:30頃ネパールの地を踏んだ。 ネパールはこの時期は乾季だからかジメジメしたイメージは無く、乾燥した砂漠のような空気だった。そのためか空中を舞う砂埃も相当なものだった。1日で鼻の穴が真っ黒になってしまうのだ。 この次の日からハナクソほじりが私たちの間でブームになった。おもしろいほど黒い。 それはさておきここネパールの首都カトマンズは標高が1350mもあるらしいが、緯度は奄美大島と同じ位あるのでこの時間でも気温は15℃位あり、特に寒いとは思わなかった。この日はもう飛行機で満腹状態だったので夕飯も食べずにホテルで休んで寝た。 シャワーを浴びたらなんか水が茶色かった。しかも排水つまってた。 11月25日 カトマンズで朝を迎える。外を見るとまだ暗いが何か鳥が何羽も飛んでいる。「おおっ!」と喜んで双眼鏡を取り出して見ると…。うげ、ドバトやん…。 なんか日本のドバトとははばたきの早さが全然違うように思った。酸素が薄いから?(関係無いって。)ああ、ネパールに来て最初に見た鳥がドバト…。あうー。 それから朝食前後にホテルの周辺で鳥を探したがスズメ、イエスズメ(House Sparrow)、イエガラス(House Crow)ぐらいしか発見できなかった。唯一良かったのはタカサゴモズであった。
不思議なのはスズメとイエスズメが仲良く同居していること。どこへ行っても大抵競合しているのに不思議なことにネパールでは一緒に餌を食べている。 それから我々はバスに乗ってネパール南部のチトワン国立公園へ向かった。カトマンズの町にはあまり鳥はいないが一歩郊外に出るとインドアカガシラサギ(Indian Pond Heron)やオウチュウ、タカサゴモズ、クロノビタキ(Pied Bush chat)などがよく現れる。 インドハッカ(Indian Myna)なんか密林以外ならどこでもアホほど見られる。この鳥はオーストラリアにもいるがそれはどっかのおっさんが移入したヤツで、元来の生息地はこちらなのだ。 農耕地の上空にはツバメがたくさん飛んでいて、なんかコシアカツバメみたいなのがいるので見たら、コシアカツバメだった。なんじゃそりゃ。ただしこのへんのコシアカツバメにはダースモール、いやDark form(暗色型)がいて別種に見えるから気をつけましょう。 途中で一度休憩をとったドライブインの周りでちょっと散策。変な声がするので寄っていくと、喉の赤いサンバードがいてビビりまくった。こいつはCrimson Sunbird(キゴシタイヨウチョウ)の♂であった。 「アジアのハチドリ」と私が勝手に呼んでるタイヨウチョウはどれも鮮やかでヨダレものである。そのほかそこらへんにRed-vented Bulbul(シリアカヒヨドリ)という、そのまんまの和名のヒヨドリがいたが死ぬほど普通種であることがわかった。 なんか、英名を和名に直しているとタダの直訳で和名がつけられているのによく出会う。私ならこの鳥に「アカフンヒヨドリ」とか、もっと美しい(どこがやねん)名前を付けるんだが。 朝夕の気温差の大きいネパールでは気温が上昇してくる午前10時ごろから蝶がどこからともなく沸いて出てくる。その種は沖縄と似ているが、サッパリ意味不明なのも大量にいる。コノハチョウやマダラチョウの親戚っぽいヤツや、コノマチョウっぽいのもよくみかける。あと多いのはシロチョウだ。アゲハも多い。シロオビアゲハと思われるものが多かった。 カトマンズから車で5時間、いよいよチトワンの近くへやってきた。農村風景に尾の長いオウチュウがポコポコポコポコとまっているのが目に入る。 しかし何にもない草原に出ると道らしい道もないし、だんだん不安にかられてきた。「おいおい、どこいくねん…。」草地でCrested Lark(カンムリヒバリ)を見つけてもじっくり見る気がしない。
この旅はツアーなのだが参加人数がなぜかうちの家族3人だけでしかもスポンサー(母)が経費をケチって添乗員をつけなかったため、ネパール人のガイド(日本語可。)とドライバー(ワキガ。)と私たち3人だけでの8日間だった。 で、いきなり何の説明もせずに川の端で車を下ろされ、そこにいた正体不明のおっさんがうちらのスーツケースを勝手に車から降ろし始めた。うわあ、なんかやばい?ガイドは何も言わない。すると向こう岸からカヌーがやってきてなんとマシンガンをもったお兄ちゃんが3人来るではないか!「やっべー、ヤラレタ…。」 もうだめだ…と思った。このときはもうネパール人全員が悪魔に見えた。あーあ。この中で最初に撃たれるのは男の俺やん…。私の頭の中でこれまでの人生が走馬灯のように回り始めた。みぐるみはがれてスーツケースを奪われ、死体は川に放り込んでワニの餌…。 いややー!お兄ちゃんたちがスーツケースをカヌーに乗せ始めた。あっ、パクられた…。3人ともが青ざめたそのとき、思い切ってガイドを問い詰めた。「これからどうするんですか?」そしたら、「んー?ボートに乗って行きますよ。」はぁ?!「ホテルは川の中州にありますから、ボートで行きますよ。」…。 てめぇ、もっとはやく説明しろコノヤロー!!!!おのれスベディ46才、許すまじ…! かくして、マシンガン兄ちゃんたちは国立公園密猟パトロール隊、正体不明の人はポーター、私たちは死なずに済んだのである。 我々の中ではすべてガイドのせいになった。しかし、この時ばかりは本当に生きた心地がしなかったのである。 まあ、でも、そうとわかれば何の事はない、打って変わって天国である。川岸にはアカツクシガモが遊び、ハクセキレイやオオハクセキレイ(Large Pied Wagtail)が歩き回っている。 オオハクセキレイはセグロセキレイによく似ているが眉斑が幅広い。それにセグロセキレイは日本固有種だからこんなところにはいるはずがない。図鑑ではここらのハクセキレイは日本にいる亜種と違い、プリングルスのおっさんみたいな顔をしている写真が掲載されていたので見るのを楽しみにしていたが、どれもホオジロハクセキレイで、プリングルスのおっさん顔のハクセキレイには出会えなかった。しかし対岸を双眼鏡で見てみると2頭のホッグジカが草食ってた。 カヌーに乗って中州に上陸。この川にはヌマワニやガンジスカワイルカが生息していると聞き、目玉が飛び出るくらい探したがどっちも見られなかった。個体数が減って彼らを観察するのは容易ではないらしい。そりゃそうだわな。 見上げると、川の中州とは思えないほど大きな木が茂り、自然度の高い森が目の前に佇んでいた。あたりからは小さな鳥の声が聞こえてくる。日本なら全て聞いただけで種類を特定できるが、さすがにここではさっぱりだ。 木々の隙間を移動する影を追う。双眼鏡で捉えると黄色い小鳥が目に飛び込んできた。明らかに属レベルで日本には分布していない鳥類だった。2本の翼帯が目立つ彼らはCommon Iora(フタオビヒメコノハドリ)と呼ばれ、Commonというだけあってチトワンの森の住人の中でも最も個体数が多かった。 しばらくこの30羽ほどの群れを見ていると一羽の鳥がぴょっと飛んできて木の幹に直接止まった。慌ててみると上面がルリ色で嘴が真っ赤なアカハシゴジュウカラ(Velvet-fronted Nuthuch)だった。なんじゃこりゃー!あまりの美しさに泣いた。 地面にはSpotted Dove(カノコバト)がえっこらえっこら歩いとった。 ガイドが「行きますよ。」と声をかけてくる。ええい、気の効かんガイドめ。ワシに鳥を見せろー。とりあえずロッジのあるジャングルリゾートまで歩く。気づくと2時をまわっていたのでまず昼食にする。食事が終わると、食堂の裏で鳴いている鳥が気になる。 まだ食事中の家族を捨てて外に出る。するとスズメのようにチュンチュン鳴いているのは日本ではまだ2,3例しか記録のないキバラムシクイ(Tickell's Leaf Warbler)で、しかも何羽かうろちょろしておった。他にもムナフムシクイチメドリ(Striped Tit-babler)や、ヤナギムシクイ(Greenish Warbler)らしきものも見られた。 「チュイッ」っと聞きなれた声がする。キマユムシクイだ。沖縄でさんざん声を聞いてきたからツレみたいなもんだ。「やあ、久しぶりー」と声をかけて寄っていくと、かなり迷惑そうに逃げていった。裏切り者め。 それから夕方のエレファントライドまでは自由行動だったので、当然ほっつき歩く。 シロガシラに似た声を出しているのはコウラウン(Red-whiskered Bulbul)というへんな名前のヒヨドリ。誰だこんな名前付けたの。 カヌーを降りた場所に向かって来た道を戻っていくと途中に水溜りがあり、なんか居るかな?と思って双眼鏡で見てみるとなんと白黒の美しいForktailがいるではないか!メガトン鼻血ブー!もううれしくてニヤニヤしてしまう。手元に図鑑がないのでじっくりみて特徴を頭に叩き込む。なんてかわいいんやー。うへー。 結局、この鳥はBlack-backed Forktail(セグロエンビシキチョウ)とわかり、毎日ここへこいつに会いに行ったが、この一回だけしか姿を見せてくれなかった。この一瞬ですっかりエンビシキチョウファンになった私はエンビシキチョウを捜し歩いたが、以後一回も見れなかった。人生は楽ではない。およよよ…。 時間になったのでロッジに帰り、エレファントライドに出かける。鳥だけでなく無差別に生き物好きな私はこれが楽しみでしょうがなかった。 象の背中は高く、縦ゆれを想像していたが横揺れが激しく、酔うかと思ったが楽しくてそれどころではなかった。象は何頭かいて一緒に歩くのだが、幸い私たちの象、「ヒラカリーちゃん26才」が先頭だった。よっしゃー、トラでもサイでも何でも出て来い!象の上なら強気な私。 さっき一人でジャングルをうろついていたが、後で聞いたらこの森にはトラとヒョウとクマとワニがいるらしい。いつ食べられてもおかしくなかったわけね…。 このライドの売りはインドサイの観察。象に乗ってジャングルを歩き回ることによってかなり高率に野生のインドサイに出会えると言うのだ。 沢山鳥はいるが、象が歩いている間は揺れて双眼鏡が使い物にならない。かといっていちいち象を止めてもらっては夜になってしまう。そしたらトラに食われてしまう。ジャングルの中にエレファントグラスと呼ばれる4mぐらいあるエノコログサのお化けみたいな草が茂る湿地で、数頭のアキシスジカが逃げていくのが見られた。またそのあたりにはAshy Wren warbler(シロハラハウチワドリ)やコウラウンが多くみられた。しかし結局サイはみられなかった。暗くなってきた。諦めるしかあるまい。残念。 ロッジに戻って気が付いたが、電気がナイ。来てないのだ。私はテント生活をしていたこともある(ホームレスじゃないですよ。)ので、これぐらいのことでは屁とも思わなかった。自然の中ではこれくらいがちょうど良いのかもしれない。と一人で納得。ただし食堂には自家発電の電気が来ていて、明るい環境が整えられていた。 ネパールの夜は結構冷える。日中は暑いのに夜は寒い。だからか明かりにも昆虫があまり寄ってこない。変なカブトムシとか飛んでこないかと期待したが全然そんな気配はなかった。ガックリ。 ここであった日本人のおねーチャンが2日振りに日本人に会った、と言っていた。一人で、ネパール?何やってんですかあんた…。 部屋は姉、母の組と私一人の2部屋に分けられた。ツインの部屋にエキストラベッドが搬入できないためらしい。まあ、おかげで一人でどべーんとくつろげたが。 部屋に帰ると、ドアのそとにカンテラが置いてあった。電気来てないからね。なんか、ランプの宿みたい。っていうか、そのものだ…。で、トイレに入ったら、な、…流れない…。(小)でよかった。だが待て。ここには2泊の予定…。(大)はしてはならないのか!!ぎゃびょーんんん! 母に助けを求める。母たちの部屋のは一応流れるが2,3回に一回流れきらないことがあるという。でも一切流れない私の部屋のトイレよりはマシなので(大)のときは救援を求めることにした。とりあえず何とかなるだろうということで自分の部屋に戻る。 シャワーをあびて寝よう、と思ってバスルームへ。しかし、また悲劇が。お湯が出ナーイ。昼間なら水でもええが、夜はちょっと寒いと思うんだけんど。6時から11時まではお湯出るって言ったやーん!うそつきぃぃぃぃぃぃ!! 翌朝、まだ暗いうちから目がさめた。ネパールより日本の方が3時間ほど早いので、ネパールは4時でも日本は7時なのだ。で、めちゃめちゃ日本時間ボディの私はパッチリ目がさめてしまった訳だ。 フクロウかなんか鳴いてないかな、と耳を澄ませるが何も聞こえない。ポツ、ポツ…。んん?何の音だ?まさか、雨!?おにゃー!!朝のエレファントライドはどうなるんじゃあ?! もう、ポツポツという音が耳について離れない。とりあえず5時半にはレンジャーがモーニングコールをしに来る(電話ナイから人が来る。)はずだからその人に聞こう…。気分はウルトラダークネスである。 「乾季なんちゃうんか?そうや、すぐ止むわ!」自分に言い聞かせるようにしつつ窓から空を見てみる。真っ暗で何も見えナーイ。そのときノックが。「Good Morning」と男の声。すかさず開けて「なあなあ、今日さあ、象に乗んねんけど雨降ってるやんかあ、大丈夫なん?」と関西なまりの英語で(あるんかそんなの)聞くと、男は「雨?違うよ。これは朝露がしずくになって落ちてきてるだけさ。」と嬉しげに答えた。 彼は笑って見せたが「だまされたな、へっへ。」という目をしていた。そのあと男はなぜか自己紹介をして去っていった…。それにしても正直言ってビビった。乾季だというのにこの湿度。雨と間違うほどの朝露の量!これぞレインフォレスト!なんだか嬉しくなった。こんな不思議な森の中に今、自分がいることが何だかうれしくなってきたのだ。 湿った空気と森のにおい。どこか西表に似たようで違うような雰囲気が、全身の毛が逆立つようなゾクゾク感が私を内側から駆り立てるようで、ジッとしているのがとにかく嫌だった。私の先祖はネパール人か?でも絶対東南アジア系。沖縄とか南方系の自然に踏み込むとなんだかミョーに懐かしい感じがする私は何者なんでしょうか。 ようやく空が白み始めた頃、森の輪郭が霧に浮かび上がってくる。しかし、この朝は我々は他の客たちとの兼ね合いで象に乗ることは出来ず、ジャングルトレッキングというイベントに参加することになっていた。いつのまにか。 まあ、とにかくレンジャーの歩くの早いこと。それから他の西洋人たちのパワフルなこと。うちの家族の軟弱なこと。 とりあえずジャングルの入り口に着いた。姉と母はもう限界に達していた。(早すぎ!)ここで、危険な動物に出会ったらどう対処するかレンジャーが英語で説明してくれた。 サイに出会ってご機嫌斜めだったら木々の間をジグザグに走って逃げる、トラに会ったらじっと目を見ながら刺激しないようゆっくり後ずさりすることなどが注意された。っていうか、それしか聞きとれんかった。母が、「トラに会ったらジグザグに逃げたらええねんな。」って言ってた。それじゃやられるよ、お母さん…。 いざ、ジャングルに踏み込んでみると、それはもう、ジャングルやった。一応、動物ウォッチングが目的なのだが、レンジャー、歩くの早すぎジャー。 しばらく歩いているとすぐ後ろからこの世のものとは思えない悲鳴が聞こえてきた。見ると姉にヒルが付いたらしい。そういえば姉は昔から蚊とか吸血生物に人気があったなあ。よし。いいオトリだ。すっかり姉は元気を無くし、血を吸われてもないのに青白い顔になっていた。 森の中を歩いていると、象の糞が落ちているが、(野生の象ではない)そのひとつにフンコロガシみたいな糞虫がついていた。日本のダイコクコガネみたいだがもっとでっかい。食ってるものも象の糞だし。 さらに歩いていると、前方の木がガサガサ揺れ、レンジャーが小声で「サル」と言った。アカゲザルの群れだった。ニホンザルそっくりだが尾が長い。そのまま歩いていってエレファントグラスの群落に出たところで突然ガイドが「サイ!」といって指差した。私もその辺の人に教えてあげようとしたがサイは音に敏感なので誰にも聞こえないように「サイ!」と叫んで自分を正当化しといた。 見ると、大きなインドサイが草むらに埋まっているではないか。生まれつき眠そうな顔でこっちをみている。パタパタと耳を動かすが別に逃げる様子はない。距離は30mぐらいか?もっと近いかもしれない。しばらくお互いに観察しあっていたがレンジャーの指示に従って静かにその場を離れる。
昨日のエレファントライドは何だったんだ。歩いてて見れるとは思わなかった。しかも今朝のエレファントライドの参加した人たちはサイに会えなかったと後で聞いた。ラッキー。 日が昇ってきた頃、川の近くに行くと、レンジャーが地面を指差している。「なに?」と聞くと「Tiger」と一言。砂の上に大きな猫の足跡みたいなのがドーンとついていた。これって…結構新しくないっすか?ちょっとドキドキしてあたりを見まわす小心者の私。まあ、トラはチトワンでも個体数が減少していて滅多なことでは見られないのだが。もし襲われでもしたひにゃ、世界一運が悪い男に認定されることうけあいである。 そんなこんなで結局誰もトラには襲われず、(襲われてたら、アンタ…。)無事にロッジに帰りつく。すぐに朝食を食べて部屋に戻る。私以外の2人は朝からへばって死体のようになっている。私は少しの間川を見に行きカワイルカを探したが当然見られなかった。ただ流木にアオショウビン(White-throated kingfisher)が止まっていた。カワセミもいた。注意深く見たがどう見てもただのカワセミだった。 次にイベントでカヌーで川くだりをした。でもカヌー乗り場まで1時間くらい歩いたため、再びうちの家族は動きが鈍くなった。で、カヌーに乗ってロッジまで戻ると言うわけ。 川辺にはアオショウビン、アオアシシギ、オオハクセキレイなんかがたくさんいる。アカツクシガモなんてクリクリした目でじーっと見つめてくるだけであんまり逃げる気がない感じだった。ワニやイルカは見つからない。 1時間もかけて歩いたのにカヌーだと15分で帰ってきてしまった。遠くの方にはシロガシラトビ(Brahminy Kite)やベンガルハゲワシ(White-rumped Vulture)が何羽か旋回していた。
それから昼食まで予定がなかったのでまた単身ジャングルに討ち入り。しかしジャングルに踏み入る前にロッジの庭でフタオビヒメコノハドリの群れに出会った。キバラムシクイやアカハシゴジュウカラは既に普通種である。 地面近くにカササギを小さくしたようなカタチのがいたので見るとアカハラシキチョウ(White‐rumped Shama)だった。上面が黒く、下面はオレンジ、腰は白く尾が長い。あまりにも異国情緒あふれる姿に見とれてしまう。 私の横ではノドジロオウギビタキ(White-throated Fantail)が尾羽を扇子のように開いてはフリフリ、フリフリ、…かわいいやつめ。おもちゃみたいな鳥だ。 特に鳥が目に付かなくても一本の木をジーっと見ていると必ずなにか動いている。だから自分は動かなくても次々鳥がやってくる。 目の前の低い木にキツツキが飛んできた。セグロコゲラ(Grey-capped Woodpecker)だ。日本のコゲラ程は小さくないが小型のキツツキの一種で、チトワンの森では最もよく見かけるキツツキだ。それよりもっと高い幹にはコモンアカゲラ(Fulvous‐breasted Woodpecker)が時々見られた。 ネパールのキツツキってもっと派手なのを想像していたが日本のよりもかえって地味なぐらいだ。もっとも、ここにもGolden Backと呼ばれる背中が金色のでかいキツツキが生息しているのだが。 またわき腹の赤いチャバラゴジュウカラ(Chestnut-bellied nuthuch)がやってきた。でもアカハシゴジュウカラのほうがやっぱりきれいだ。 道を歩いていくと藪に小さいミソサザイみたいのがウロウロしているのが見えた。オナガサイホウチョウ(Tailor Bird)だ。後で気づいたがこいつはロッジの周りにもいっぱいいた。藪にもぐってて観察しづらい。 道の脇にツグミ大の地味な鳥が2羽いた。白い眉班と胸に黒い縦班。茶色いホントに地味な鳥だった。これはムナフジチメドリ(Puff-throated Babbler)だった。なんとなく、嫌いじゃないタイプ。(鳥全部ちゃうんか!) 時間がせまってきたので来た道を戻っていると、今度はなんか見たことない鳥の群れがわらわらわらわら来た。ベニサンショウクイ(Grey-chinned Minivet)とコベニサンショウクイ(Small Minivet)の混群だった。鼻血ブー!コベニサンショウクイのオスの色―!!!どえりゃーきれーうひょおおおおおお!全く目が釘づけ! 鼻血を拭く暇もなく今度はハイガシラヒタキ(Grey-headed Flycatcher)とヒタキサンショウクイ(Bar-winged Flycatcher-Shrike)(和、英ともにどういう名前だ?)が頭上に飛んでくる。打って変わって今度はシブい…。ヒタキサンショウクイなんて何者かぜんぜんわからんぞ。ヒタキなのか、サンショウクイなのか、モズなのか。どれでもないような気がする。首が痛くなるまでこの群れを見て、ロッジに戻り、昼食をとる。 2時からは象についての説明があった。で、象の体の構造とかアフリカゾウとの違いとかを教えてもらって、最後に「誰か象に乗りたい人いませんかー?」というので、そのへんにいた知らんニュージーランド人と一緒に乗せてもらう。両耳を持って鼻に足をかけて象の顔を登った。(だってそうやって登れっていうんだもん。) すぐ下ろされるだろうと思っていたらそのまま象はジャングルに入っていった。「あれ?どこいくの?」10分くらい歩いてたら川に出た。象使いは私のほうを向き「川に突っ込むから。」と言った。待てい。 私は下ろしてもらったがニュージーランドのお兄ちゃんはノリノリで服を脱ぎ始めた。しかも何故か海パンスタンバイOKだった。喜んで水浴びする象たち。ニュージー男は調子に乗りすぎたのか象の上から飛び込んだ。しかし思った以上に川は浅かったらしく、「イエーイ!」と言って飛びこんだのに上がってきたら頭からダラダラ血を流して泣きそうな顔をしていた。おっさん…。 私はその血にワニが寄ってこないかとハラハラして目を輝かせて(こらこら。)見ていたがワニは見れなかった。残念。(なんてヤツだ、俺。) 3時45分からはバードウォッチングがあるというのでそれまではロッジの周りでくつろぐ。のべーっとお茶飲んどったら突然黄色い鳥が頭上に飛んできた!げっ、コウライウグイスやんけ、しかも頭クローイ。ズグロコウライウグイス(Black-hooded Oriole)だった。なんかもう、にやけてしまいますな。(おまえだけじゃ。) ハイバラメジロ(Oriental White-eye)もいた。 ちなみにここのロッジの名前は全部鳥の名前がついていて、(例えばIoraとかOwlとか、Egretとか。)私の寝泊りしている部屋はOriole(コウライウグイス)だったのだ。(お湯出なくてトイレ流れないけど)何かの縁か?しかし以後コウライウグイスは出なかった。 そしてバードウォッチングに行く時間になった。とりあえずまた船着場まで歩く。そこからほえほえとカヌーで対岸へ。対岸は中州とは対照的に放牧地になっているためサバンナ状態になっている。今度はカンムリヒバリをじっくり見てやろうと探すがいない。 まず最初にインコ系の声がするので高い木のテッペンに目を凝らすと、いたいた。頭が赤いバライロコセイインコ(Blossum-headed Parakeet)であった。他に私が見たインコは頭の黒いズグロコセイインコ(Slaty-headed Parakeet)、オオホンセイインコ(Large Indian Parakeet)だったが、よく見ればもっと種類はいただろう。しかしどれも高い木からおりてこないし全身が緑でナイス保護色なので見つけづらいのなんのって。たくさん鳴いてるんですが。 それから先に歩いていくと突然レンジャーが「サイがおるで!」(英語→関西弁ですんません。)と小さく叫んだ。双眼鏡で見るとなるほど、サイですか。(…だじゃれ?)レンジャーがどんどんサイに向かって歩いていく。あのー、サイにそんな思いっきり突っ込んでっていいんですか?しかしさすがはレンジャー、サイに近寄れる距離を知っているのか、ある程度で止まった。もう肉眼でもはっきりサイです。(←?) 私はこんな芝生みたいな草地にサイが出てきていることに驚いた。サイはとても目が悪い動物で、これほど近寄ってもあんまりわかってないカオをしていた。草食ってた。においで気付けよ、野生動物。 奥のほうにインドクジャク(Indian Peafowl)の♀が2羽いたがレンジャ−も「あれクジャク。」ぐらいしか言ってくれなかった。
あんまり近付きすぎると危険なのでレンジャーが音を立ててサイに注意をうながす。(人間に注意をうながされる野生動物もどうかと思うが。)サイは「いやーん」ってな感じで鼻をフゴフゴ言わせながら藪に入っていった。するとその直後別の方向から同じフゴフゴが聞こえてきた。とたんにレンジャー達が「さがれ!」と指示を出した。なんでもサイが喧嘩してるときに近くにいるとサイに轢かれたり踏まれたりして危険らしい。目が悪いので相手のサイと間違って人に頭突きをかましてくるらしい。目が悪いにもほどがあるぞ、サイ。 我々はその叢を遠巻きにして歩いていく。するとまたサイがいるやん。なんなの?ここは。サイ牧場か?さっきのと同一固体だろうと思って双眼鏡で見ると今度のは角がめっちゃ短い若い子だった。レンジャーに聞くと3歳ぐらいだろうとのこと。デカい3歳だな、オイ。ちなみに3歳ぐらいまでは母親といっしょに行動するらしいのでさっきのが母親だったのかもしれない。 その辺の木にはシリアカヒヨドリとコウラウンが遊んでおった。レンジャーが「Vulture」というので見たら、でかい木の上にベンガルハゲワシが巣を作って座っておった。こんな時期に繁殖してんのか?うーん、わからん。 そこら辺をツバメやタイワンショウドウツバメ(Plain Martin)が飛び交ってた。何だかんだいって結局そのへんでインドサイを5頭も見てしまった。昨日の苦労はなんだったのか。 聞くところによるとサイもジャングル内に宿泊施設ができたり、道がついたりして住みにくくなって最近村の方へ出てくるようになったのだそうだ。そして畑を荒らして問題になっている。どっかの国といっしょですな。 夕日をバックに川に浸かっている大きなサイを見ながらそんなことを考えた。 日本ではカラスが空を鳴きながら飛んでいく夕焼けが風流だが、チトワンではオオホンセイインコがぎゃーぎゃー鳴きながら次々と飛んでくる。東京のワカケホンセイインコ見てるみたいだ。日本では鳥かごの中でしか見ない彼らが自然の中ではとても生き生きして見える。やっぱり鳥は空を飛んでこそ鳥であろう。東京ではかごぬけ鳥だの、害鳥だのと言われ放題だがここでは立派な自然界の一員である。少なからず感動。 余談であるが前、シンガポールの動物園で飛んでいるコンゴウインコを見て鼻血ブーしたことがある。なぜ日本人はあんなきれいな鳥を閉じ込め、縛り付け、その美しさを台無しにするのか理解できない。ちょっと長い余談だったが、文章の中にちょっとしたメッセージ性も含ませたかったんですぅー。 帰りにはインドクジャクのディスプレーが見られた。尾羽(正しくは尾羽ではない)を広げて懸命にメスにアタックするオス。メスは思いっきり無視して何か食っていた。カワイソーに。誰かみたい。(誰や!)オスは切ない表情をしていた。 小さな川にカエルがたくさんいた。なんという種類かレンジャーに聞いてみたが「俺はカエルはわからへんねん。」とのこと。ちっ。体型はカジカガエルのように扁平でヌマガエルに似た模様があって泥に浅く潜っているのだが近づいていくとまるでトビハゼのように水面を水切りのように連続ジャンプで逃げるのだ。おお…面白い…。 捕まえたかったがこいつらを捕まえるにはかなりなりふりかまわずモードになる必要があったので、日本代表としてそれはやめといた。(今思えばやればよかった。) ロッジに帰る途中にレンジャーが「明日からバードウォッチングはサイウォッチングに変えなあかんなあ。」と冗談を言っていた。ソレ、ワタシ、コマリマス。トリ、ミタイデス。と、目で訴えておいた。 11月27日。今日はチトワンを発つ日である。この日も朝露のぽつぽつという音で目覚めた。この日はガイドに無理を言ってもう一度エレファントライドに参加させてもらった。 朝霧の熱帯雨林は幻想的で鳥の声やたくさんの生命の息吹が肌にピリピリ伝わってくるようだ。 我々が象に乗って出発し始めたとき木々の間を埋めつくしていた乳白色の霧は徐々に流れはじめていた。乾季の間の植物たちの命の糧となるこの霧はトラやサイなどの大型の動物にとっても重要な隠れ蓑となる。今この瞬間、この森に自分がいられるということがとてつもなくうれしかった。 私たちは木々の葉に、草の穂になでられるように朝露の洗礼をうけつつ森を進んだ。突然、象が立ち止まった。サイだ。茂みの奥からじっとこちらを見ている。いつもはおちゃらけた私だがこの森のことを思い出すとなぜかまじめ口調になってしまう。それはチトワンが「心の森」だからだ。私はたぶんネパール人ではないが、(「たぶん」って…。)なぜか懐かしい感じのするこの森の雰囲気に飲み込まれていくような気がするような、しないような、なのである。(どっちやねん。) ネパール語でチトワンとは「心の森」という意味なのだそうだ。これを知って私は心底シビレた。(足にデンキウナギが…、とかではなく。)なんていい名前だろう。いいなあ、ネパール人。私の「心の森」はどこにあるのだろう。3丁目の商店街とかにあったらやだなあ。 チトワンとはこれでお別れ。はっきりいって一週間ぐらいいてもぜんぜん平気そうだった。(トイレさえ流れれば。)2日しか滞在できなかったが何だか時が止まっているようで長い間住んでいたような気さえした。ふと見ると姉は帰る気満々であった。やはりこいつに電気のない生活はムリであったか。 人それぞれにこの森の感じ方が違うのは当たり前だけど、やっぱりボクはネパール人? チトワンの森を心に焼き付けながら船着場まで歩く。カヌーからイルカやワニを探すがどうしてもダメみたい。ただアカツクシガモのつがいだけが悲しげな声をあげて見送ってくれた。 そこからまた車に乗って走る。その辺の放牧地でヤツガシラやオジロビタキなど日本で珍鳥とされるものどもがぽこぽこしてた。あと、おなじみのコチドリもいた。なんでネパールまできてコチドリ見なあかんのやろか。 我々を乗せた車は次の目的地ポカラへ向かった。車の中からホオジロムクドリ(Asian Pied starling)やらモリハッカ(Jangle Myna)やらを頻繁に見かけた。インドハッカは言うに及ばずアホほどおった。 途中でインドクジャクが道路を横断して轢きそうになった。誰か飼うとんちゃうんか!ニワトリみたいやったぞ。 峠道にさしかかるとヒマラヤの峰々がその雄姿を現した。ネパール語ではヒマ・アラヤといい雪の家という意味である。ネパールでは雪のあるところだけを「山」といい、何千メートルあろうとも雪がなければ「丘」なのだそうだ。おそるべしネパール人。ちなみに雪のあるところが全部「ヒマラヤ」で特定の山を指す言葉ではない。 山が(もちろんヒマラヤの意)きれいに見えるところで車をとめてガイドが写真を撮ってくれる。そうこうしていると向こうからサリー(民族衣装)を着た女性が2人歩いてきたので、ガイドのおっさんにナンパ(?)してもらって一緒に写ってもらった。どんどん山が近くなってくるのを眺めているうちになんか町に入ってきた。 ポカラの町だ。電線にコウハシショウビン(Stork−billed Kingfisher)が止まっていてそのデカさにビビった。こういうとすごくデカそうに聞こえるがヤマセミ大で、べつに5mとかではない。そんなにあったら食われます。 またインドブッポウソウ(Indian Roller)にも出会えた。ニヤリ。(←ちょっとうれしい。)クロノビタキやハイバネジョウビタキ(Hodgeson's Redstart)なんかも時々そのへんに止まってた。それからふつうのノビタキも多かった。 とりあえずホテルに入って荷物を下ろす。ポカラでも2泊である。うーん。トイレが流れるっていいことだ。とっても高級なホテルだった。日本の皇族も泊まったという一流のホテルらしい。ひえー、私なんぞトイレが流れれば電気なくてもじゅうぶんですううう。 でも結局じっとしてられない性分なのでホテルの庭で探検する。(子供か!)すると大きなトカゲが日光浴してた。沖縄のキノボリトカゲがそのまんまデカくなった感じだが種類はわからない。池のまわりにはクロジョウビタキの♀がいたので追っかけまわして遊ぶ。(遊ばれてたような気もする。) そこで昼食をとって市内観光に出かける。もうこうなってはチトワンの時のような自然たっぷりのツアーではなくなってしまった。はじめにDavid's Fallという滝を見に行った。大きくてなかなか迫力のある滝だった。落ちたら痛そうだった。 この滝の名の由来は昔Davidさんが滝を見にきて誤って落ちて亡くなったことからDavid's Fallと呼ばれるようになったのだという。つまり、「滝」の「Fall」と「落ちる」の「Fall」をカケてるんですねえ。死してなお、ダジャレを残すとは、Davidさんはタダモノではない、と思った。そんで、そういう名前をつけちゃだめだよ、ネパール人。 滝の入り口の売店でおばちゃんが「ティッシュペーパーとブツブツコウカン。」と叫んでいた。ネパールではティッシュは貴重品なので、その辺のお土産品と換えてくれるというのだ。おばちゃんがブレスレットを出してきて「これ、ほんもののシルバーよ」と言って私に渡してきたがどうみても偽者だった。そんなんで特にほしいものはなかったので物々交換はしなかった。他の観光地にもこういう人たちいるかな、と思って油断してたらこの物々交換おばちゃんズは他の場所にはいなかった。残念。実はちょっと交換やってみたかったのに。 ここではシキチョウ(Magpie Robin)を見た。黒と白の尾の長い鳥で東南アジアに広く分布している普通種だ。ネパールではここではじめてみた。 そのあとはいくつか観光地を見て回った。ヒンドゥー教の寺院を見学したらイケニエのヤギとニワトリの首を切って引きずりまわした血の跡が地面にこってりこびりついてて、大学の解剖実習室を思い出させた。一瞬現実に戻りかけたではないか。うーん、シヴァ神あなどれん。 ちなみにネパールの人口は2200万人なのにヒンドゥー教の神様は3300万人もいるそうである。誰か全員の神様の名前を言える人はいるのだろうか…。そして言うのに何日かかるのだろうか。 その日はもうホテルに帰って休んだ。ホテルの裏には広い畑が広がり、クロノビタキやオウチュウ、アオショウビンなどがそこら辺にとまってた。ホテルの芝生にオオルリチョウ(Blue-whistling Thrush)などというクロウタドリみたいなヤツが歩いとった。あとホテルの植え込みのほとんどがイエスズメのねぐらになってた。農耕地の上空にはベンガルハゲワシ、カラフトワシといった大型の猛禽が舞っていた。 部屋に戻ろうと廊下を歩いていると向こうからきた日本人のオバちゃんに「ナマステー(こんにちは)」と言われた。私はやっぱりネパール人だったのか。 ホテルのレストランに夕食を食べにいくと、日本人が結構泊まっているようで、シェフが頑張ったのか、日本人向けの料理が出されていた。ピーマンと茄子炒めのうえに、かわいらしい字で「ぴまとなすいたみ。」と書かれていて、ネパール人、かわいい…と思った。 11月28日 この日もポカラ滞在。当初の予定ではサランコットの丘というとこに行って、日の出とヒマラヤ連邦を見る予定だったが朝から霧で中止(山が見えない)となった。4時半に起きたのにいー。 しゃあないから朝食までは部屋で休んでその後ポカラの市内観光に行くことになった。 ホテルの裏の畑を見渡すと昨日と同じ鳥たちがのんびり餌を採っていた。チョウゲンボウやマミジロタヒバリも見られた。 朝食をとってからベグナス湖という湖を見に行く。駐車場からポクポク歩いていくと湖の手前に養魚池があり、なんかいるかなと思って双眼鏡で見たら「おおお!?」ヒメヤマセミ(Lesser Pied Kingfisher)とアオショウビンが大量発生してた。7,8羽ずつはいるだろう。 同じ水銀灯の右にアオショウビン、左にヒメヤマセミという光景に思わず「っきゃー!ショービン♪ショービン♪」と鼻血ショウビン音頭を披露してしまった。(なんじゃそれは)しかもその下を見るとインドアカガシラサギが増殖してた。地面を埋め尽くさんばかりのインドアカガシラサギ…。強烈。湖を見に来たのに湖は全然見ないで養魚池に夢中の私。ガイド、呆れ顔。水辺の藪にはチベットモズ(Grey-backed Shrike)といううれしげな名前のモズが。しかもそのへんを飛んでたツバメの群れの中にズアカサンショクツバメ(Indian Cliff swallow)が混じってた。うぎゃあ。(←注:発狂時の喜びの声)帰り際にチトワンで夜キャンプファイヤーしながら歌いまくってたインド人家族に会った。(日本人も歌え!と言われて家族で「さくらさくら」を歌って、子供を泣かした。) それからベーワ湖にあるレストランで昼食。島にあるレストランには10人乗りのイカダに乗っていった。そこでネパール式のカレーを頂く。カレーが出来るまで窓から鳥を見ているとキバラオウギビタキ(Yellow-bellied Fantail)が見られた。黄色いっス。だからキバラなんやっちゅうの。 他にもオジロビタキとかハナドリ(Buff-breasted Flowerpecker)とかカレーが出来るまでに結構鳥を見た。何しに来てるんでしょう。レストランは鳥を見る場所ではありません。良い子は真似しないように。(悪い子は可。) カレーは変わった味がしておいしかったが量がハンパではなく食いきれる量ではなかった。おえ。ネパールはあまり公衆トイレもないので気軽に腹を壊すわけにはいかないのである。帰りのイカダは10人乗りなのに白人集団がいっぱい乗ってきて14人も乗ってしまったのでイカダが沈みそうになった。私は端っこに乗ってたらイカダの綱引っ張るおっさんに「もっと真ん中によって下さい。」と言われてしまった。床上浸水5秒前状態で地獄の100mをわたっている途中、イカダの目の前をカワビタキ(Plumbeous Redstart)の♀がひらひらと飛んでった。くそう、イカダの上を移動できないじゃないか。こいつら最初から俺にカワビタキを見せないつもりだな!(そうかなあ) その後今度はマヒンドラケーブという洞窟にコウモリを見に行った。最初は普通の洞窟に入った。普通の丸っこい石を指して「シヴァ神。」とほざく現地ガイド。シバくぞ。あんた本当にそれがシヴァ神に見えるんか?まあ、よくある鍾乳洞のこじつけですな。日本でも「観音様」とかよくある。 次にコウモリのいる洞窟に入った。どんな種類のコウモリがいるのか聞くとフルーツバット(植物食、特に果実を好む連中で超音波を出さないものが多い。)だという。普通、フルーツバットは洞窟にはいないんですけど。(超音波出さないから)どれくらいの数がいるか聞くと「5000位かなあ、いや500かな?50かも。」とか言ってやがった。 中に入ってしばらく行くと天井一面のコウモリが!大鼻血ブー。フルーツバットの中でもルーセットオオコウモリという連中は唯一超音波を出すフルーツバットとして知られていて、洞窟にすんでいる例もあると聞いたことがあったので、もし本当にフルーツバットだとしたらルーセットだろうと思っていたが、いざ見てみると思いっきりキクガシラコウモリ系の「飛翔昆虫食ってます♪」って顔してやがった。この現地ガイド、うそつき…。でもいちいち英語で訂正すんのもしんどいのでそのまま「Great!!」とか言っといた。しかし、壮観。5000とはいかなくても2000はいるだろう。いやあ、スバラシイね。 だが、母と姉は嫌がっていた。しかも現地ガイド、入った穴からではなく、違う穴から帰らそうといういらん気を使ってくれて細い穴を通らされて泥だらけになった。でもコウモリ良かったからいいや。穴の外に出るとキバラオウギビタキやハイガシラヒタキがお出迎えしてくれた。シジュウカラもいる。あー。現地ガイドはいらん。でも入場料を払うともれなく付いてしまうんだな現地ガイド。 それからはネパールの自然史博物館を見学。ネパールの国鳥ニジキジ(Monal Pheasant)の剥製があったがカンペキに退色していてぜんぜん「虹」じゃなかった。
ホテルに帰り、夕食をすませて売店の前を通りかかったら、やたらフレンドリーなおっさんが出てきて「やあ、トモダチ!」と言って寄ってきた。あんたと友達になった覚えはない。何か買えと言うので昨日買ったからもういいと言うと、「英語うまいね、君はカラテのチャンピオンかい?」と意味不明なことを言ってきた。 いくら誉めても私は一文なしだ。皮ジャンを持ってきて、「洗濯OK。」いや、いいんだってば。と言ってるのに、「これなら、着たままカラテやっても破れません。」とか言ってた。ごめんね、カラテのチャンピオンでなくって。 11月29日 この日は朝から霧が出ていなかったので、昨日予定していたサランコットの丘に朝日とヒマラヤを見に行った。 日の出前に着いてまだ暗い空に目を凝らす。なんかデカイ陰がずうーむむ…とそびえ立っている。えっ?あれがヒマラヤ?うっそ、デカ過ぎやん?しばらく待っているとゆっくりと日が昇り、ヒマラヤの峰々がオレンジ色に輝きを放つ。あいーん。信じられない美しさだった。真っ白い雪が朝日を浴び、その色も千変万化してゆく。きっとその日によっても色が違うんだろうな…。なんて考え始めたらきりがなくなるくらい、私のような単純な人間の心を奪うのには十分な光景だった…。 しかし今日はカトマンズ行きの飛行機に乗らなければならないので我々は何度も巨大な山々を、前人未到の霊峰「マチャプチャレ」を振り返りながらホテルに帰った。途中でまた日本人に「ナマステー」と言われた。10分で朝食をとって大急ぎで空港へ。しかしここでトラップ発動。なんと行先のカトマンズが濃霧で着陸できないため飛行機が離陸しないのだ。早く言え。何のためにこんなに急いだんじゃあ。もっと山見てたかったのに。 ポカラの空港でトイレに入ったら電気つかなくてまた流れなかった。またかよ…。結局霧が晴れたのは10時頃だった。飛行時間30分でカトマンズに戻ってきた。 空の上から地上を見てると、全然電気も水も無さそうなところで、しかも車が絶対来れなさそうな山の上にいくつも人家があった。前に見たテレビ番組でネパールでは身分の高い人が酸素の多い低いところに住み、貧しい人は酸素のない山の上に住まされるとか言ってた気がする。 昼食をとってネパールで最も有名な寺院・スワヤンブナートを見学する。なかなか大きなストゥーパ(仏塔:卒塔婆と同語源らしい)があり、ほえーと思った。中に入ると沢山のお坊さんが意味不明の言葉を唱えながら集団で座ってた。なんかゴールデンチャイルドとかが出てきそうな雰囲気120%だった。 あんまり見てはいけないような気がしてすぐ外に出る。そこら辺にマニ車と呼ばれる赤ちゃんのガラガラみたいなものがいっぱいあって、それを一回まわすとなんと9000回のお経を唱えたことになるという。これを考えた人は絶対めんどくさがりだと思う。他にもお寺の壁に無数の大仏が彫ってあって、一周すればなんと9000回参拝したことになるお寺もあった。いいかげん、ヒンドゥー教の信者も疲れが見える気がする。でもなんで9000なんでしょ?この「なんと9000回!」というのがなんか通信販売みたいでヤダ。宗教的に縁起のいい数なんでしょうな。ちなみにこのスワヤンブナートはモンキー・テンプルとも呼ばれ、アカゲザルがたくさん生息している。さながら嵐山のサル山だ。しかしこんなでかい建物を何百年も前に建てた昔の人には感心する。 それからカトマンズの市内観光に行く。ダルバール広場やら、生き神クマリの館やらを見学する。生き神クマリは呼ぶと一瞬(5秒位)顔を出してくれる。以前TVでその宿命や生活をやっていたが、その本人に会えてなんか複雑だった。TVではまだ子供だったが、その時よりは大きくなっていた。8歳くらいだという。 クマリの顔を見た観光客はみんなそこの賽銭箱にお金を入れていた。さすが生き神。大変だけど頑張ってね。(ええんか、タメ口。) そのへんのお土産屋を見て回ってたら、なぜかラモスの写真が張ってあった。ラモス、笑顔。そこでは沢山のインチキ押し売りがいっぱいいて、わけのわからん物を売りに来る。中に一人しつこいのがいて、よくわからんオモチャを一個千円で売りつけに来たが、ずーっと相手にしなかったら気が付いたときには3個100円に値下がりしてた。でも買わなかったけどね。このあたりは古いお寺や歴史のある建物が多くかつての王宮なども見学した。 このあたりからバザールと呼ばれる店の集まっている地域を歩き回ってお土産などを買う。夕食はそのバザールのはずれにあるチベット料理屋でとった。チャーハンや焼きそばが出てきて、日本のものに似た味でおいしかったが、その後に出てきた鍋がえらいことになってた。ヒンドゥー教では牛を神の使いとして、豚をケガレとして食べないので、基本的に鳥、ヤギ、水牛を食べている。で、当然この鍋にも肉が入っていたのだが、どうも水牛だったらしく鍋から動物園の象のオリのニオイが…。ぐふっ、ごめんなさーいいい。(ネパール料理の中に「モモ」という水牛肉で作るギョウザがあるがこれはまったく臭わない。)これはちょっとお手上げだった。しかも、このレストランのトイレがまた、流れなかった…。 11月30日 今日でいよいよネパールも最終日。帰ればキビシイ現実が待っている。そんなことを思いつつ我々はカトマンズの空港にいた。まだ帰るわけではない。朝の予定が「ヒマラヤ遊覧飛行」だったのである。しかしまたしても霧で離陸不可能なのである。 昼と夜の気温差が激しいネパールのなかでもカトマンズは盆地だから朝霧発生率はきわめて高い。10時になってやっと離陸。雪のある山が段々見えてくる。そして、一番遠くに見えるひときわ大きな山が世界最高峰・エベレストである。よくまあ、あんなところまで行く気になるなあ。私は立山でも酸素足りなかったダメ人間だ。えっへん♪(…?) そして富士山の山頂よりも標高の高い山の上にバザールがあると知ってぶったまげた。人が住んでおるのか…そんな酸素のないところに…。あうー。 飛行機を降りてから再び町で観光。いくつかのバザールや寺院や民芸品工場なんかを見て回った。鳥は、というとカトマンズにはもう、全然いなくて、オオアナツバメ(Black-nest swiftlet)くらいしか見れていない。イエガラスとか、イエスズメとか、インドハッカばっかりがハバをきかせている。 昼食には日本料理を食べた。はじめは「ネパールに来てまで日本料理食べてどないすんねん!」と言って変更を希望したが、「もう変更できません。」と言われた。しかし、ここしばらく日本料理から離れていたので味噌汁と番茶と日本米に感動した。「苦しゅうない、近うよれ。」と言う感じだった。(何かちがうんじゃ…) 午後もひたすら観光とショッピング。怪しげなお土産をたくさん買う。だって鳥いないんだもーん。(いじけんなよ) 夜はネパール料理屋に行く。店に入るとオバちゃんが「ナマステー」と言いながらいきなり私の額に赤いポッチンつけた。あぁ、第三の眼が…。とか言いつつうれしがって写真をとる。食事の前にネパールの地酒がつがれた。「ログジー」というお酒でアルコール度数70%の強さに私は無条件降伏するしかなかった。だって、ボーイさんがログジーに火付けて燃やしてるやん!青い炎がメラメラと…。一口で呼吸困難になるところだった。ゴフッ。(私は酒が飲めないタチです。)で、やっぱりカレー食べながら、「ネパールダンス」なる踊りを鑑賞する。なかなか激しいダンスですごい楽しそうに踊ってた。陽気な民族なんですねえ。 さて、そんな楽しい国、ネパールともお別れ、夜中の関西空港行きの飛行機に乗るため私たちは空港へ向かった。私は飛行機の中で、やっぱりチトワンの森を思い浮かべていた。なんだか遠い記憶の中にでも存在するかのようなチトワンの森。 私は今この国を去る。でも、私たちがいなくなってもきっとあの森は変わらないまま多くの生命を抱いて静かに佇んでいるだろう。いつかまたこの地をもう一度訪れることができたら、そのときも同じ森であってくれるだろうか。人々の「心の森」として。 |
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