野鳥の短歌・俳句

この部屋は、管理人が独断と偏見で選んだ野鳥の短歌及び俳句(京都野鳥の会会員による作品)を掲載するものです。/掲載された方、もしご迷惑でしたら、ご一報ください。/もし他薦、自薦に関わらず、掲載したら…という作品がありましたらお知らせください。/横書きで読みにくい点はご了承ください。

京の山若葉の森にきびたきの帰りきて啼く春となりにけり

蘚寺の庭に人無き春の晝もずさえづれりめじろを真似て

つばめ飛ぶ宇治大橋の三の間に白雲あふぐ初夏の朝

朝の茶をすすりてあれば窓の外にさんくわうてう啼く黒谷の寺

時ならぬ椿の花をよろこびてめじろ友よぶ山かげの寺

目を閉ぢて日ねもす鳥をききておはす瑠璃の御堂(みだう)のおんほとけかも

川村多実二(『三光鳥』第1号:昭和28年発行「京の鳥」より)


赤松の梢点々白鷺の入陽に映ゆる冬の丹波路

雪どけの笹濁りたる浅瀬三つ小鷺動かぬ裏町の朝

鴨川の瀬にも小鷺の佇みて思案顔なる三月の朝

春うらら並ぶ小鷺の色冴えて保津の川瀬の水ぬるむなり

白鷺の翼に光る夏の陽の青田爽かに風にそよげり

松本貞輔(『三光鳥』第26号:昭和54年発行、「白鷺に題す」より)


うぐひすに明けゆく岨の蚕屋障子

月あげし樹海夜鷹の声きざむ

郭公や苔生小栂の高きより

大瑠璃や天領の杉真青なる

鴨鳴くや投げ網古ぶ番屋裏

大森春子(『三光鳥』第31号:昭和59年発行)


胸の斑は濡らさず雛の川烏

山越の鶫をりをり養花天

葦原の雲より落ちて鵙猛る

乾びても流木重し雁の頃

翁忌の野に光撒く尉鶲

細川玲子(『三光鳥』第33号:昭和61年発行、「鳥好き」より)


夏燕冠水の田を飛びまはる

虎鶫鳴けり早寝の行者宿

留袖の帯締むるとき雉子の声

神子秋沙見るとき忽と潜りけり

長き尾のこちらに向きし三光鳥

上村佳与(『三光鳥』第42号:平成7年発行)


堰落つる水の白さに真鴨翔ぶ

ほととぎす奥峰雲を育てつつ

降る雪や梢の鴛鴦みじろがず

野鶲(のびたき)や湿原はまだセピア色

小啄木鳥鳴く新樹に沈み皇女塚

井上環(句集『青鷹(もろがへり)』より)


畦に寝て鷹の渡るに遇ひにけり

郭公の一声毎に森明くる

百合鴎己が孤影とたはむれり

一羽居て田鳧儒者めく干拓田

芽起こしの風に声研ぐ四十雀

細川十雨(句集『四十雀』より)


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